調べてみた EV(電気自動車)の充電速度 「公称値」との差、本当に速いのはどれ?

公開 : 2023.11.11 18:05

・欧州で販売されるEVの充電速度を比較調査。
・いわゆる「メーカー公称値」と実際の速度の差は意外と大きい。
・利用状況を踏まえ、現実的に速く充電できるEVを20台紹介。

実際、充電が一番速いのはどれ?

EV(電気自動車)が世界的に注目を集める中、航続距離やバッテリーの安全性、車両価格などさまざまなトピックが話題に上がるようになった。今回は、「充電速度」に焦点を絞って、メーカー公称値(カタログ値)と実際の速度を比較しつつ、ユーザーの利用状況も考慮しながら見ていきたい。

欧米や中国を中心とするEV普及は加速する一方であり、慣れ親しんだ内燃エンジン車を手放し、最新のEVに乗り換えるユーザーも増えている。しかし、EVを所有する上でさまざまな問題に直面することもある。その1つが充電だ。

市販EVの充電速度、最も速いのはどれか。
市販EVの充電速度、最も速いのはどれか。

どこで、どうやって充電するのか? 充電にかかる時間は? インフラは整っているのか? 充電に関する問題は、EV購入時の大きな障壁となる。

特に、自宅で充電できるかどうかが重要な鍵であり、今後もそこは変わらないだろう。しかし、現実問題として、多くの人々にとっては自宅で充電するのは難しい。当面の間は、ガソリンスタンドのように点在する公共の直流(DC)急速充電器が大きな役割を担っていくはずだ。

しかし、一部のEVでは、カタログ値と実世界での充電速度に大きな違いが見られる。適切な充電器を見つけたとして、最新EVの実際の充電速度はどれくらいなのだろうか? そして、一番速く充電できるのはどのモデルだろうか?

2022年秋以来、AUTOCAR英国編集部は、試乗したすべてのEVで急速充電性能のベンチマークテストを行ってきた。その結果、いくつか重要な事実が明らかになった。実際の充電速度は、平均値を計算すると、どのクルマも謳っているピーク速度とはかけ離れている可能性がある。

これはすべてのEVに当てはまることだが、充電速度はバッテリー残量が満タンに近づくにつれてかなり遅くなることが予想される。しかし、一部のモデルは他車よりも速度低下が著しいのだ。

【重要】EV充電速度のテスト方法

AUTOCAR英国編集部が実施している急速充電テストは、対象車両のピーク充電速度を満たせる出力の急速充電器を使用し、10%、30%、50%、70%、90%の充電率(SOC)において、実際にどれだけの電力がバッテリーに送られているのかを観察し、記録するというものである。

実用上、すべてのテストに同じ充電器を使用することはできない。また、可能な限り充電前にバッテリーをプリコンディショニングする(状態を整える)が、多くのEVでは充電率が10%以下になるとプリコンディショニングができない。

ユーザーの利用状況などを考慮した評価を英国で行った。
ユーザーの利用状況などを考慮した評価を英国で行った。

試乗するEVはおおむね英国仕様の車両であり、充電設備のレベルも基本的には英国の水準となる。当然ながら、充電器の性能はメーカーや運営会社によっても変わるし、充電時の天候もある程度考慮しなければならないだろう。

そして、一般的にユーザーが重視するであろうポイントを反映した「重み付け」を行い、テスト結果を平均化する。公共の急速充電の利用料金は、一般家庭での充電に比べて比較的高価である。ほとんどのユーザーは、定期的な習慣(通勤など)ではなく、特定の移動のために急速充電を利用する傾向にあるため、充電率20%未満から急速充電を行ったり、80%を超える充電を行ったりする人は多くない(時間効率が悪く、バッテリーの寿命にも大きな影響を与えるため)。

そのため、充電率50%を超えたときに示す速度は、10%や90%といった極端な充電率で示す速度の3倍、同様に70%や30%で示す速度はそれらの2倍重要と捉えている。ややこしいかもしれないが、現実的な利用状況を評価に含んでいると考えていただきたい。

というわけで、ここからはAUTOCAR英国編集部がその充電速度を高く評価した上位20台を紹介していこう。あくまで本稿執筆時点でテスト済みのモデルをランク付けしているため、最新モデルなどでは残念ながら評価が間に合わなかったものもある。その点もふまえていただくと幸いだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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