アウディRS4アバント
公開 : 2014.01.30 16:07 更新 : 2017.05.29 18:18
このご時世に、あえて自然吸気エンジン。これまた贅沢といっていい。3.0TFSIのV6をさらにギンギンに過給すれば現状程度のスペックは出せたかもしれないけれど、それはやはり、RS4としてはビンボー。S4との違いがウスくなってしまう。
アタリマエだが、運転していて過給モノっぽさはまったくない。贅沢。低回転域というか常用域のトルクは分厚い。6速1000rpm=40km/hで走るのが気持ちイイ。フツーに発進して、アップシフトのポイントはだいたい1500rpmあたり。気がつくと、ギヤは5速に入っている。エ、いつの間に?! とホントに思った。それくらい、変速の仕事がステルス系。7速100km/hのエンジン回転数は2000rpm。もっと低くしても走れるだろうけど、これも贅沢のため。
可変アシがついてない一方で、例のドライブセレクトはついている。ついてしまっている。どうやら標準装備であるようなので、しかたなし。
問題はハンドル関係。ドラセレの制御モードを“自動”にしておくと、アホみたいにカルいところから速度とともに操舵力がグイングイン変わっていって気持ちワルい。運転しづらい。とても贅沢とはいいがたい。“コンフォート”だと、全体にカルめ基調になるぶんマシ。でも、低速域で操舵入力を勝手に増速しやがる(要は、ビーエムのアクティブフロント操舵のアウディ版)のはここも同じ。
“ダイナミック”だと、その増速モードがキャンセルされる(少なくとも、据えぎりでのロックtoロックの回転数は確実に多くなる)。あと、全体にオモめ基調になる。高速域での減速は入ってる気がするけれど、ハンドル関係の設定はここがベスト妥協点と判断。ただしエンジンやギヤボックスの制御モードは“ダイナミック”だと血気盛んすぎてこれまたウザいので、“個別”モードを選んでハンドル関係のみ“ダイナミック”に設定。他の項目(エンジン&ギヤボックスのほかにスポーツディファレンシャルの制御に関してもある)は“自動”に。“コンフォート”でもたぶん問題なし。
でも結局のところ、どのように設定しようとハンドルとタイヤの間のどこかにナニモノかが常駐していることに変わりはない。ナニモノかとは、おそらくハーモニックドライブかナニかの増減速機構。増減速をやってないときでも手応えでわかる。ソイツがいることが。で、それはあまり贅沢ではない。
クルマのハンドル関係における究極の贅沢はシンプル&ナマ。混ぜものナシ。ウィスキーならシングルモルト(知らんけど)。ナニも足さず。ナニも引かず。素で勝負。さすがにサーボアシストなしはムリとしても、ワルター・ロールがラリーで走らせていたS1クワトロの舵感はこうであったろうかと妄想させるようなのをモノにしてほしい。で、“ROW”モードかナンかを選ぶとそれになるように。
素で1195万円もするのでナビは標準。あとB&Oのサウンドシステム。これはついててくれて苦しくはなかった。David Sylvianの2枚組ベスト盤(全曲リマスター)のCDを開封し、鳴らして聴いた。
(文・森 慶太 写真・花村英典)