スズキ・スペーシア

公開 : 2014.01.30 16:15  更新 : 2017.05.29 18:41

……と、本誌読者のようなエンスージァストにはパレット以上に遠い存在になった(?)スペーシアだが、この種のものとしては、とてもよく走る。少なくともN-BOX/タントと比較して、もっとも自然な操縦性。タイヤがスズキ得意の超高圧型(14インチの指定空気圧は2.8bar)で細かいザラザラ&コトコトはなくはないが、動きが落ち着いているので総合的な乗り心地はベストといっていい。まあ、ワゴンRと比較すればアタマの重いグラリ感が皆無でないにしても、微妙に前傾したロール軸でしっかりと接地して、スムーズに曲がっていく感触が伝わるのは心強い。パレットの美点はスペーシア開発陣も重々承知していたのだ。

ワゴンRと共通のプラットフォームと軽量設計と回生システムを持つスペーシアは、なによりウエイトが軽いのがいい。このカタチで全車800kg台とはちょっとスゴイ。軽量化&低重心とボディ剛性を両立するために、生産ラインにまで手を入れてスポット溶接の数も増した。ワゴンRに続いてガラスも薄型タイプ。そうした上屋の軽量化と低重心化に加えて、NA車でも上級のXにはフロントスタビ装備。最も安価なGはスタビなしだが、リバウンドスプリングだけはつく……と、かわいい顔に似合わず(?)、操安、とくにロール剛性への手立てはかなり凝っている。

今回は市街地だけの試乗だったので断定はできないが、これだけ軽ければ動力性能はどこでも十分だろう。ただ、静粛性だけはもう少し改善の余地はありそうである。風切音/ロードノイズ/エンジンノイズ……と、とくに何が特別うるさいというわけではないものの、全体ににぎやかなのは軽量設計の宿命かもしれない。

ちなみに、スペーシアでもパレット同様に、標準系ボディとターボの組み合わせが用意される(カスタム系もほどなく出るが)。タイヤサイズもNA上級グレードと同じで、乗り心地もほぼ同等。良くも悪くもスポーツ志向のカケラもない。スペーシアに少しでも興味があって「家族兼用のアシに……でもワル顔は気恥ずかしい」というエンスーも安心(!)である。
(文・佐野弘宗 写真・望月浩彦)

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