真のアイデンティティは宿すのか? メルセデスAMG GLC 63 S Eパフォーマンスへ試乗 総合680psのPHEV

公開 : 2023.10.26 19:05

クラストップの動力性能に見合う操縦性

フルスロットル時のサウンドは、ドラマチックさが少し薄い。ドライブモードを切り替えると、エグゾーストの音質や音量が変化するし、変速時などにはアフターファイヤーの破裂音も入り交じる。それでも、内臓へ響くような低音の深みまではない。

操縦性は、クラストップの動力性能に見合う。カーブが連続する区間を積極的に走らせれば、可変レシオのステアリングが正確に反応。手のひらには、しっかりとした感触も伝わってくる。

メルセデスAMG GLC 63 S Eパフォーマンス 4マティック+ プレミアム(欧州仕様)
メルセデスAMG GLC 63 S Eパフォーマンス 4マティック+ プレミアム(欧州仕様)

AMG GLC 63 Eパフォーマンスには、後輪操舵システムが標準装備。更に、トルク分配率を自在に調整する四輪駆動システムと、電子制御リミテッドスリップ・デフ、リアアクスルのトルクベクタリング機能が、突出した回頭性と敏捷性を担保する。

前後の重量配分は49:51で理想値といえ、電子制御スタビライザーによるアクティブロール・システムが、姿勢変化や荷重移動を緻密に抑制。フロントが265、リアが295というワイドなタイヤが路面を掴み、揺るぎない安定感でコーナリングラインを辿れる。

乗り心地は適度にしなやか。落ち着きと姿勢制御を両立させている。21インチ・ホイールを履く試乗車の場合、大きな隆起部分や段差をなだめきれない場面もゼロではなかったが、可変ダンピングコントロールにより不快な衝撃は即座に抑え込まれていた。

真のAMGアイデンティティまでは宿さない

動的能力で気になった部分が、ブレーキ。フロントへ390mmのベンチレーテッドディスクと6ポッドキャリパーが組まれ、制動力は間違いなく強い。しかし、ブレーキペダルのタッチが曖昧で、パッドがディスクを挟んでいる感覚を得にくい。

メルセデスAMG側も、これは理解している様子。エネルギー回生モードを4段階備えることが、要因になっているという。

メルセデスAMG GLC 63 S Eパフォーマンス 4マティック+ プレミアム(欧州仕様)
メルセデスAMG GLC 63 S Eパフォーマンス 4マティック+ プレミアム(欧州仕様)

肝心の価格は、英国で10万8995ポンド(約1973万円)。先代のV8エンジン版から、2万ポンド(約362万円)以上も値上がりした。ちなみに、よりエキサイティングなSUV、ジャガーFペース SVRは8万5180ポンド(約1542万円)となる。

AMG GLC 63 Eパフォーマンスは、極めて強力で高速なSUVだ。高度なシャシー技術により、ワインディングで見事な走りを披露しつつ、荒れた路面でも落ち着きは失わない。最新のデジタル技術も実装し、完成度は間違いなく高いといえる。

反面、従前のようなドラマチックさは薄まっている。一定の演出は与えられているものの、ドイツ・アッファルターバッハの技術者が培ってきた、真のアイデンティティまでは宿していないかもしれない。

◯:極めて高速 改善した燃費
△:6・8気筒のライバルほど魅力はない 車重は軽くなく、体感的な力強さは期待以下

メルセデスAMG GLC 63 S Eパフォーマンス 4マティック+ プレミアム(欧州仕様)のスペック

英国価格:10万8995ポンド(約1973万円)
全長:4716mm(標準GLC)
全幅:1890mm(標準GLC)
全高:1640mm(標準GLC)
最高速度:275km/h
0-100km/h加速:3.5秒
燃費:13.3km/L
CO2排出量:170g/km
車両重量:2235kg
パワートレイン:直列4気筒1991ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:680ps(システム総合)
最大トルク:103.7kg-m(システム総合)
ギアボックス:9速オートマティック(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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