先日のジュネーブ・ショーでシトロエンが出展したコンセプトカー“テクノスペース”は次期C4ピカソの確定デザインといわれる。実際、現行C4ピカソの生産はすでにストップしていて、日本国内のピカソも市中在庫のみ。5008の本国発売は約3年前。今さら……の感はなくはないが、ピカソが一時的にでもショールームから消えるとなればハナシは別。大きくはないが根強い輸入ミニバン市場をピカソでがっちり握っているプジョー・シトロエン・ジャポンは、ピカソがいぬ間に顧客がトゥーランに流れるのを、見過ごすわけにはいかないのだろう。

5008は車名の頭文字こそ“5”だが、プラットフォームは508ではなく308系。5008と従来型ピカソは兄弟車といってよい。プラットフォームの基本設計は両車共通で、2725mmのホイールベースもほぼ同寸。3分割セカンドシートや、左右独立で床下収納可能なサードシートもおそらく同じものである。ただ、5008のほうがピカソより全長が短く、全高が低い。日本仕様のギヤボックスはロボタイズドM/Tではなく、おなじみのアイシン6A/T。そして、スポーツカーを思わせる大きなセンターコンソールに包まれる運転席は、プジョーの同じ4ケタモデルの3008に似る……といったあたりが5008の特徴である。

5008はプジョーとしては日本初上陸の本格ミニバンとなるそうだが、ミニバンが極限まで進化した日本から見ると、5008のパッケージはアラっぽい……というか、ハッキリいうと“オマケつきの5人乗りハイトワゴン”と考えたほうがいい。3列目は足もと、頭上、ヒール段差とも、日本の成人男性にはミニマムにも達しておらず、つま先を奇妙な方向に折り曲げながら、アシを抱えて長距離移動するのは、ほとんど罰ゲーム。2列目スライドを融通して3列目にギリギリの空間を分け与えると、今度は2列目レッグルームがミニマムになってしまう。かわりにサードシートをくるりと反転して収納すると、下にシートが隠れているとは思えないほどの低床大容量の荷室が出現。全体的にピカソよりタイトなのはボディサイズから想像されるとおりだが、「大人はまともに座れない」という現実はピカソも5008も大同小異。7人がきちんと座って移動したいなら、全長はさらに短いがムダの全くないパッケージのトゥーランをおすすめする。