プジョー5008シエロ
公開 : 2013.03.26 16:34 更新 : 2017.05.29 19:01
このように多人数乗り車としては評価しづらく、ピカソほど前衛的なインパクトもない5008だが、走りはもう感動的にステキである。とくに16インチのプレミアムは、背高ドライバーズカーとして、その操安性と乗り心地はお世辞ぬきで屈指といっていい。
速度を問わずに路面から数mm浮いているかと思わせる本物のフラットライド。なのに、濃厚な接地感と絶品のストローク感。基本は安定しきったアンダーステアカーなのに、荷重移動やスロットルコントロールでキッカケを与えれば、きっちりヨーを増す。ロール量は小さくないけれど、ロールしきってからネバりにネバりまくるフトコロの深さは、最近めっきり少なくなった「いよっ、フランス車!」である。17インチのシエロはこれに対して、全体のゆったりしたチューンのなかでゲインの高いステアリングだけが浮いた風なのがタマにキズだが、総合的には当世ミニバンでトップクラスのダイナミクス性能である。
このピカソに輪をかけたフランス的しなやかさと安定感は、もちろんピカソより背の低いディメンションによるところもあるだろう。しかし、5008の中身はピカソと共通点が多いといっても同じではない。たとえば、日本で売られていたピカソの最終期は、リヤに車高調整エアサスを標準装備する“エクスクルーシブ”のみとなっていたが、5008の場合は前後ともコイル式。3008のようなロール抑制機構も備わらず、リヤトーションビームにはプジョー初の液封ブッシュ採用。つまり、同グループのCセグメント系の背高ユーティリティ車では、5008のアシが最もコンベンショナルだが、同時に現時点で最も新しい。さらにピカソのように“シトロエンらしさ”の演出も不要だからか、特定のポイントを意図的にとがらせたようなチューニングでないのも好感がもてる。
発売3年のピカソ派生型……と、失礼ながらあまり期待していなかった5008だが、こんなステキなクルマだったとは! トルコンA/Tと重めのパワステのおかげで、ピカソのような独特のクセもない。“ハンドリングオタク向け背高グルマ選手権”なるものが存在すれば、5008はルノー・カングーと双璧の存在だろう。私の場合、これは最大級の賛辞である。
(文・佐野弘宗 写真・田中秀宣)
プジョー5008シエロ
価格 | 330.0万円 |
0-100km/h | 9.8秒 |
最高速度 | 195km/h |
公称燃費 | 13.0km/ℓ |
CO₂排出量 | 179g/km |
車両重量 | 1600kg |
エンジン形式 | 直4DOHCターボ, 1598cc |
エンジン配置 | フロント横置き |
駆動方式 | 前輪駆動 |
最高出力 | 156ps/6000rpm |
最大最大トルク | 24.5kg-m/1400-3500rpm |
馬力荷重比 | 97.5ps/t |
比出力 | 97.6ps/ℓ |
圧縮比 | 10.5:1 |
変速機 | 6段A/T |
全長 | 4530mm |
全幅 | 1840mm |
全高 | 1645mm |
ホイールベース | 2725mm |
燃料タンク容量 | 60ℓ |
荷室容量 | 679-2506ℓ |
サスペンション | (前)マクファーソン・ストラット |
(後)トーションビーム | |
ブレーキ | (前)φ302mmVディスク |
(後)φ268mmディスク | |
タイヤ | 215/50R17 |