美しさで免れたスピード違反 アウディR8 V10パフォーマンス RWD 愛おしい1台との別れ(1)

公開 : 2023.10.30 19:05

スピード違反チケットを戻すくらい素晴らしい

「助手席に座ってみますか? ご希望でしたら、少し一緒に走りませんか?」。と思いきって提案してみた。彼が葛藤しているのがわかる。少し間をおいて、立場的には正しい回答が返ってきた。「お断りしておきます。ありがとう」

「出発して構いません。ネバダ州へもう一度戻れるように、スピードには気をつけてください。事故が多いとはいえませんが、小さなものでは済みませんから」

アウディR8 V10パフォーマンス RWDエディション(英国仕様)
アウディR8 V10パフォーマンス RWDエディション(英国仕様)

アウディR8のスタイリングは、カリフォルニアのハイウェイ・パトロールがスピード違反のチケットをポケットへ戻すくらい、素晴らしいものだったようだ。2007年の出来事だった。

初代アウディR8は、その後のAUTOCARの年末恒例企画、ベストドライバーズカー選手権で見事に優勝を掴んだ。2007年の審査員全員が、他のモデルを選ぶことはなかった。

それから16年が過ぎ、筆者は少し大人になった。R8も成長し、2代目へ生まれ変わっている。寿命が近づいているのは、後者の方だけであって欲しい。

グレートブリテン島の南西部、南ウェールズ州のワインディングを、流れるように真新しいR8が駆けていく。少し特別な空間と時間が、これまでの印象深かった体験を自然と蘇らせるようだ。

もうすぐR8の生産は終了し、永久に新車では手に入らなくなるだろう。愛おしいモデルとのお別れは、いつも悲しい。歴代すべてのR8が、鮮明な印象を残したわけではないとしても。

この続きは、アウディR8 V10パフォーマンス RWD 愛おしい1台との別れ(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

アウディR8 V10パフォーマンス RWD 愛おしい1台との別れの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事