道が真っ直ぐでも曲がっていても（あるいは舗装がよくなくても）、レーンの真ん中をキレイにキープして走りつづけるのが、このシャシーはものすごくカンタン。精度の高い走り。タイヤのトーその他がヨレないリヤサスが効いている感じは明瞭にある。油圧アシストだった頃と較べるとハンドルの手応えは全体にちょっと規制されてる感があって（フリーハンドの反対方向で）、でもそれも、レーン真ん中キープしつづけの運転しやすさにはプラスに効いている印象。導入当初からそうだったけれど、EPS（電動パワステ）モノとしてはワンオブベスト。ということは、クルマのフロントまわりの骨格がちゃんとしている。

前後のグリップバランス関係のこととしては、フロントのロール剛性をしっかり上げてあるのが印象的。そのフロントタイヤに、重たい（少なくともカル〜くはない）エンジンがしっかりと荷重をのせている感じ（だから直進もイイ）。でもってリヤは比較的落としてあって、というかアクセルを踏むとグッと蹴りながらちゃんとキレイに沈んでくれて、要はギッチリとトラクションをかけながら曲がっていくためのセッティング。このへんの考えかたというかしつけられかたは、フツーのV8マスタングも同じ。

ここまでお読みになった人はすでにおわかりのように、いわゆる“ユルい”系の気持ちよさはこのパフォーマンスパッケージ、あまりない。‘05モデル以降のこの世代のマスタングの日本仕様のなかではいちばんないかもしれない（ただし神経質なタイプではないので大丈夫）。でもこれ、運転していて気持ちいいことでもイチバンかもしれない。少なくともワンオブベストではあるでしょう。借りられてラッキー、と思わずにいられなかった。

(文・森 慶太　写真・花村英典)