ミドシップ化の叶わなかった4代目 シボレー・コルベット C4 ZR-1 アメリカン・スポーツの代名詞(2)
公開 : 2023.11.11 17:46
ロータスが開発したLT-5ユニット
1990年に、待望の高性能仕様となるZR-1が登場。ターボ化も検討されていたものの、マルチバルブ・クワッドカムの自然吸気が最善と判断された。当時のGMには、開発能力が備わっていなかったのだが。
そこで活用されたのが、同時期に買収していたロータス。既に同社は、ミドシップ・スポーツカーのエスプリ用として、4.0L 32バルブV8エンジンを完成させていた。最高出力は355psに届いていた。
ロータスのマルチバルブ・ヘッドは、そのままではGMのスモールブロックへ載らず、まったく新しいLT-5ユニットを設計。ZR-1のフロントに積まれた。
シャシー・チューニングにも、同社は協力した。C4に設定されていたハンドリングパッケージ、Z51へ手を加え、しなやかなサスペンション・スプリングとアンチロールバーを採用。ロータスらしい足回りに仕上げた。
このLT-5ユニットは、オールアルミ製で軽量。片バンクに2本のカムが組まれ、32バルブで、圧縮比は11:1と高かった。現在のC8を含めても、コルベットで最も高度なメカニズムを採用したパワートレインであることは間違いないだろう。
ちなみに、LT-5の製造を請け負ったのは、船舶用船外機を得意とするマーキュリー・マリン社だった。
ザ・キング・オブ・ザ・ヒル
ZR-1のドライバーズシートへ腰を掛け、ダッシュボード上のキーを回すと、特別なV8エンジンが載っているのを実感する。従来のスモールブロックより、高回転域まで意欲的に吹け上がる。パワーバンドの頂上目掛け、滑らかに加速していく。
どのギアを選んでいても速い。速度域を問わず、加速力には大きな余裕がある。
ZR-1のコーナリングは、通常のC4と明確な違いはないだろう。だが、パワーアップに合わせてリアタイヤも広げられ、グリップ力が増している。勇ましいエグゾーストノートが気持ちを高ぶらせる。
サスペンションの塩梅は、さすがロータス。通常のC4はソフト過ぎ、Z51仕様ではハード過ぎた。その中間の絶妙なバランスにある。
C4のスイートスポットといえるZR-1は、約5年間に6939台しか販売されなかった。価格はベーシックなコルベットの約2倍と高く、1992年には最高出力がZR-1以外でも300psへ上昇し、訴求力が弱まったためだろう。
シボレー自ら「ザ・キング・オブ・ザ・ヒル」と呼んだC4のZR-1は、コルベットの理想像を体現していた。安っぽいインテリアなど荒削りな部分も含まれていたとはいえ、シリアスなパワーとハンドリングで、欧州のライバルへ対抗できる内容にあった。
その立役者といえたのが、クワッドカムのV8エンジン、LT-5ユニットだ。ひいては、英国のロータスだったといえる。
シボレー・コルベット C4 ZR-1(1990〜1995年/北米仕様)のスペック
北米価格:5万8995ドル(新車時)
生産数:6939台(ZR-1のみ)
全長:4506mm
全幅:1859mm
全高:1189mm
最高速度:281km/h
0-97km/h加速:4.9秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1572kg
パワートレイン:V型8気筒5727cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:380ps/6200rpm
最大トルク:51.0kg-m/4500rpm
トランスミッション:6速マニュアル(後輪駆動)
この続きは、シボレー・コルベット アメリカン・スポーツの代名詞(3)にて。