最後のFR+MT シボレー・コルベット C7 MRでもプッシュロッドは変わらぬC8 アメリカン・スポーツの代名詞(4)

公開 : 2023.11.12 17:46

アメリカン・スポーツカーの代名詞、コルベット誕生から70年 コークボトルラインのC3からミドシップのC8まで 英国編集部が6世代を振り返る

計画見直しへ迫られたコルベット C7(2014〜2019年)

6代目、C6のシボレー・コルベットは、それ以前と同様に想定より寿命が伸ばされた。次世代の開発が本格化する直前、2008年にリーマン・ショックと呼ばれた金融・経済危機が発生したためだ。

世界的に景気は悪化し、ゼネラルモーターズ(GM)は経営破綻。ミドシップ化するという計画も、大きな見直しへ迫られた。

シボレー・コルベット C7 ZR1(2019年)
シボレー・コルベット C7 ZR1(2019年)

果たして、2013年に発表された7代目コルベット、C7は従来どおりフロントエンジン・リアドライブFRを採用。だが、シボレーはまったく新しいと主張した。実際、基本設計を受け継いだシャシーは、スチール製からアルミニウム製へ一新されていた。

フロントに搭載されたV8エンジンは、スモールブロックのLT1ユニット。多くの改良が施され、ダイレクト・インジェクションを採用し、最高出力は461psへ上昇していた。

スタイリングも刷新。C3世代から続くロングノーズのコークボトルラインを保ちつつ、空力特性は大幅に改善されていた。ルーフやボンネット、アンダーボディなどは、軽量・強固なカーボンファイバー製となった。

前例に続き、2015年には高性能モデルが登場。Z06では、6.2L V型8気筒スーパーチャージド・エンジンを搭載し、最高出力は659psまで高められた。大パワーを受け止めるべく車高は落とされ、ボディは一層ワイドになった。

2017年には、中級グレードとしてグランスポーツが登場。モデルチェンジが迫る2019年に、C7の頂点を飾るZR1が復活している。

一般道では想像以上に手懐けやすいZR1

Z06と同様に、ZR1もスーパーチャージャーで過給された。ブロワーは大容量化され、インタークーラーも大きくなり、ガソリンを噴霧する2基目のインジェクターを追加。最高出力は765psへ到達した。

0-97km/h加速を3.0秒でこなし、動力性能では当時のスーパーカーの仲間入りを果たした。しかもこの能力は、比較的お手頃な約12万ドルで手に入った。

シボレー・コルベット C7 ZR1(2019年)
シボレー・コルベット C7 ZR1(2019年)

今回ご登場いただいたZR1には、ZTKパフォーマンス・パッケージが組まれている。巨大なウイングがテールにそびえ、相当な暴れん坊に見えるものの、一般道では想像以上に手懐けやすい。

直線加速は驚異的だが、威圧感はさほど高くない。ステアリングホイールやペダルは扱いやすく、不思議な安心感を伴う。よりシャープでありながら、確実にモダンでもある。

ステアリングの反応はクイックでダイレクト。サスペンションは引き締められつつ、鋭い入力を従来以上に丸めてくれる。7速MTもキビキビと変速できる。段数を問わず、アクセルペダルを傾けた瞬間に怒涛の加速が始まる。

英国の一般道では、グリップの限界を超えることは難しいが、リアタイヤがうずくような感覚は伝わってくる。彫りの深いバケットシートはオプション。本格的な高性能モデルだという印象を、背中越しに増している。

このZR1は、1年間しか作られなかった。まだ古くはないものの、既にコレクターズ・コルベットとして評価は上昇中。最後のFRであり、MTを備えることが、その理由になっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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