メルセデス・ベンツA180
公開 : 2013.02.26 17:07 更新 : 2017.05.13 12:52
パワートレインもBMWほどの噛みつく演出はないもののキレアジ系。排気音も図太く豪快。いかにもターボな高周波ノイズが気になるのがちょっとした弱点といえるが、パワーデリバリー自体にターボ感はほとんどない。スロットル操作にピタリと吸いつくレスポンスを、7段DCTがダイレクトに伝達するので、市街地での速度微調整もじつにやりやすい。
今回はローダウン・スポーツサスの“スポーツ”と非スポーツサスの標準モデルにオプション18インチタイヤを履かせた仕様が試乗できたが、どちらも40扁平のランフラットをもてあますような素振りは見せず、足元だけが先走るような妙なクセはまったく感じられない。低重心、豊富なサスストローク、各部剛性がしっかりして、基本能力はいかにも高そうだ。標準モデル本来の17インチを試せなかったので断定はできないが、これであれば標準モデル+18インチというビジュアル優先の組み合わせでも問題なし……というか、見た目と価格と低速での快適性を考えると、商品としてのコストパフォーマンスは高い。
新型Aクラスはシャシーもパワートレインもキレを前面に押し出して、タックインを誘えばノーズは俊敏に反応してピタリとインにつく。そこはかとなくFR感を漂わせて、ドライバーが操っている感を醸し出すスポーツカー風味の演出はなんとも上手い。ただ、それでも仮想敵であるBMWほど獰猛でなく、リヤグリップを徹底的に安定させたシャシー特性なので、山道でも本物のFRのような緊張感とは無縁である。カキカキのレスポンスだが、安全なアンダーステアはくずさない。パッと乗りはBMW風でありながら、最後の安心感はやっぱりFF、乗り手の技量に依存しない寛容さはメルセデスだわあ……という、ありがたみを感じる絶妙のサジ加減でまとめてある。
シツコイようだが、メルセデスらしからぬ最後発商品企画であり、「これはいったい何番煎じ?」の感もなくはない。ただ、メルセデスが他社を研究し尽くすとさすがに最初から完成度が高くなるという好例。いかにも売れそうな予感がビンビンである。
(文・佐野弘宗 写真・田中秀宣)