ミニ・ジョンクーパー・ワークス・ロードスター
公開 : 2013.01.26 17:55 更新 : 2017.05.29 19:15
そこでJCWクーペとJCWロードスターという日本初見参の2モデルが最も目を引いたのは当然だが、昨秋発売の新JCWのニュースはそれだけではない。ひとつが心臓部に直噴+バルブトロニック技術の追加採用……ということは、ベースの1.6ℓターボエンジンが最新型(N18型)に切り替えられたことである。ピーク性能は従来と変わりないが、ピックアップや実燃費は向上しているという。もうひとつのニュースが6段A/Tの追加。ミニゆえにもちろん出し惜しみはいっさいなく、新しいクーペやロードスターも含めて全JCWでM/TとA/Tが選べるようなった。
JCWロードスターは袖ヶ浦フォレストレースウェイでじつに小気味よくクイックに走る。標準装備のスポーツサスペンションは、サーキット走行もきちんと想定したチューニングらしく、ベッタリと安定した姿勢もくずさない。注目の6段A/Tもトルコン型としてはかなりキレのある部類なので、サーキット仕様でも不足を感じることはまったくなかった。
ミニのみならずBMWのA/Tにならって、マニュアルモードにしてもエンジン回転がリミットに達すると自動的にシフトアップするので、じつにイージー。ミニのA/Tシフトパドルはステアリングに支持された小型のもので、指先で引いてアップ、親指で押してダウン……という独特のデザインとなっている。ステアリングを持ち変えるケースも多い公道では、パドル位置固定のコラム支持のほうがありがたいが、ステアリングをきちんと握ったまま親指だけでダウンシフト(前記のとおりアップはクルマまかせでOK)できるミニのA/Tはサーキットでこそ活きる。
さらにESC作動を絶妙に制限するDTCもイージーサーキットドライブに好適。路面をわずかに掻くトラクションとアンダーステアをうまく緩和しつつも、最後のトリデはしっかり残す。なんともイージーに“踏む楽しみ”を抽出するミニのA/T+DTCの組み合わせは、本気でウデを磨きたい体育会系には物足りないかもしれないが、袖ヶ浦などのミドル&ミニサーキットあたりで即座に気軽に遊びたい同好会系(?)には、なんともちょうどいい。
ただ、今回はサーキット試乗だけだったので断言はできないが、サーキットでこれだけストレスなく遊べるということは、JCWロードスターに標準装備のスポーツサスペンションは、公道メインで遊びたい向きには硬すぎるかもしれない。かなうことならルノースポールの“シャシーカップ/シャシースポール”のように用途や好みに合わせた複数のチューンがほしいところ。こういうことをいいはじめると、ミニの仕様数は際限なく増えていきそうだが、そういうオーダーメイド感覚こそミニの真骨頂である。
(文・佐野弘宗 写真・田中秀宣)