フォルクスワーゲン・ティグアンTSIブルーモーションテクノロジー
公開 : 2012.12.26 18:28 更新 : 2017.05.29 18:58
まずステアリングの感覚はすっきりしていて好感が持てる。4WDティグアンの電制カップリング式センターデフは常に数%の引きずりを作ってフルタイム4WDを実現する仕掛けだから、操舵に介雑物が割り込んでいるはず。それがないFWD版はすっきり爽やかなのは理屈どおりである。
ところがクルマの軽さはさほど感じられかった。理由は明白。エンジンが足りないのだ。VWジャパンは上記のように日本仕様FWDティグアンに1.4ℓ直4ツインチャージャーを選んだ。クロストゥーランのそれと同じだが、スペックはあちらより10psと2kgm多い150ps/24.5kgm。かたや4WDティグアンの2.0ℓ直4ターボは179ps/28.6kgm。馬力荷重で比べると、FWD版が97ps/tで4WD版は109ps/tとなる。いにしえより速いと遅いの分水嶺と言われる100ps/tのラインを挟んで分かれているわけで、その数字を体感が証明した形だ。
足りないのはエンジンだけでなく、トランスミッションの洗練度もそうだ。熟成されているはずのDSGは発進時にクラッチつなぎが滑らかでなく、シフトダウンやアップもちと遅いきらいがある。ゴルフ程度ならともかく、重いティグアンではトルクが暴れがちなツインチャージャーとの協調制御において、微妙な瑕が目立ってしまうのかもしれない。
一方でアシ運びは悪くない。ロールがリニアに出てくる感じである。フロントのバンプストッパーは指1本半ほどのクリアランスを以て設置されているのだが、そこに当る前と後でストロークに段付きが出る感じはない。クロストゥーランより、そのあたりはずっときちんとアシが仕上がっている。
なのだが、その滑らかなストローク感を味わいながら旋回していると、基本特性が明確なロールアンダー傾向であることに気づく。4WD版ではアクセルを入れて4輪にトラクションを掛けてやって旋回軌跡を内側に引き戻せるのだが、FWDティグアンにそれは不可能だ。また、旋回中盤までにフロントに入ったロールが、リヤに抜けていくときの様子も連続性に欠ける。前と後ろの動きが微妙にちぐはぐなのだ。このシャシーは、やはり4WDに合わせて仕立てられたものなのだろう。ゴルフよりも軟質ではあるけれど上手くまとまっているティグアンは、4WDでこそ真価を発揮するクルマなのだ。
とはいえ、その差はアウディのように圧倒的に開いているわけではない。身のこなしの細部に神経質にならないのなら、初期投資の安さでFWDの選択肢もあると思う。ただし、その場合は走り出しで急いで過給器にたくさん仕事をさせる運転を多用するとてきめんに燃費に顕われ、初期投資の差が縮まってしまうだろうから、その点にはご注意を。
(文・沢村慎太朗 写真・花村英典)
フォルクスワーゲン・ティグアンTSIブルーモーションテクノロジー
価格 | 339.0万円 |
0-100km/h | na |
最高速度 | na |
公称燃費(JC08) | 14.6km/ℓ |
CO₂排出量 | 159g/km |
車両重量 | 1540kg |
エンジン形式 | 直4DOHCターボ+機械過給, 1389cc |
エンジン配置 | フロント横置き |
駆動方式 | 前輪駆動 |
最高出力 | 150ps/5800rpm |
最大最大トルク | 24.5kg-m/1500-4000rpm |
馬力荷重比 | 97.4ps/t |
比出力 | 108ps/ℓ |
圧縮比 | 10.0:1 |
変速機 | 6段DCT |
全長 | 4430mm |
全幅 | 1810mm |
全高 | 1710mm |
ホイールベース | 2605mm |
燃料タンク容量 | 63ℓ |
荷室容量 | 470-1510ℓ |
サスペンション | (前)マクファーソン・ストラット |
(後)4リンク | |
ブレーキ | (前)φ312mm Vディスク |
(後)φ282mm ディスク | |
タイヤ | 235/55R17 |