走りの洗練度はトップクラス アウディeトロン GT 長期テスト(最終) 一層の「技術による先進」を期待

公開 : 2023.11.05 20:25

ポルシェと技術共有するアウディの高性能EV、eトロン GT。英国編集部が日常使いすることで、その能力を掘り下げます。

積算1万3375km 低く構えたスタイリング

高級車がひしめくロンドンの目抜き通りで、注目を集めるモデルは限られる。男の子が、 アウディeトロン GTへ熱い視線を送っていると気づいた時は、少し驚いてしまった。低く構えたスタイリングが、カッコよく映ったのかもしれない。

ゆっくり発進しようとすると、彼は母親のスマートフォンを借りて写真を撮りだした。eトロン GTの前には、ポルシェ911 ターボも停まっていたのだけれど。

アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)
アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)

積算1万3965km 長距離旅行の経験者が複数

AUTOCARの読者には、アウディeトロン GTで長距離旅行を楽しんだ経験を持つ方が複数いらっしゃるようだ。スペイン・マドリードからルーマニア・ブカレストまでや、アメリカのコロラド州からフロリダ州までなど、かなりの距離を走った猛者もいる。

それと比べれば、英国ロンドンからイタリア・ベローナまでのドライブなど、大したことはないかもしれない。新しいモノへ関心を抱くアーリーアダプターとして、強い冒険心をお持ちなのだろう。

アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)
アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)

それでも、今回の長期テストで重ねた走行距離は1万4000km近い。スコットランドやベルギー、オランダ(ネザーランド)など、複数の国を訪問した。その過程を通じて、じっくり特性を確認することができたと思う。

現在のモデルでトップクラスの洗練度

クルマという製品としては、素晴らしい水準だったといえる。不意にリモコンキーが数日使えなくなった事はあったものの、充電は毎回滞りなく、インフォテインメント・システムも好調に動き続けた。

動的特性で気を揉むような部分はなく、走行中に内装が振動することもなし。長時間を一緒に過ごしても、新たな弱点の発見はなかったといっていい。

アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)
アウディeトロンGT フォアシュプルング・クワトロ(英国仕様)

細かい点を指摘するなら、パーキングセンサーが少し過敏なところ。初めての縦列駐車で、アラームが鳴り歩行者に当たりそうなのかと思ったが、リアタイヤが縁石へ150mmくらいまで接近しただけだった。

eトロン GTは、極めて洗練されていた。現在販売されているモデルでも、トップクラスだろう。インテリアの雰囲気と動的特性のマナーが、ここまで調和しているモデルは非常に珍しいとも思う。

確かに、カテゴライズが難しいクルマかもしれない。スーパーサルーンではない。BMW M3にスタートダッシュでは勝てるかもしれないが、BMW M5やメルセデスAMG E 63と競争できるほどの鋭さは備えていない。

リアシートの広さは、ボディサイズを考えれば狭い。ポルシェ911よりは広いけれど。シャシーはミドシップ・スポーツカーのようなバランスと落ち着きを得ているが、全長が長く車重は重い。4ドアのスポーツクーペという感じでもない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト アウディeトロンGTの前後関係

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