クライスラー300C ラグジュアリー
公開 : 2012.12.26 19:35 更新 : 2017.05.29 18:32
旧き佳きクライスラーのテイストに現代のテクノロジーを落とし込むことで生まれたフルサイズセダン。2004年に登場し、ダイナミックなシルエットと動力性能により一斉を風靡したクライスラー300がフルモデルチェンジを果たし、本邦デビューを果たした。昨今の“フルモデルチェンジ”の内幕の多くがそうであるように、クライスラー300の場合も、フロアパンをはじめとするボディの基本骨格は前作を流用し、そこにダウンサイジングされた最新のパワートレインと、環境性能、安全性能に優れたコンポーネンツを詰め込むことで成立している。
スタイリング面ではボクシーなノッチバックシルエットが踏襲されているが、デザインの方向性はよりシャープで高級感を帯びたものになっている。先代は全ての角が丸められている印象で、少し大雑把なグリルの造形などに独特の優しさが感じられたが、新型はボディ全体のプレスラインがはっきりと浮き出ており、少し冷たい印象にまとめられている。より高級感が増しているとはいえ、誰がどこから見てもすぐに新しいクライスラー300であるとが認識できるデザイン。これこそ、成功作の後継モデルに求められる一番大事な資質であろう。
新型クライスラー300シリーズは、ベーシックモデルの300リミテッドと上級モデルとなる300Cラグジュアリーの2種から構成される。先代のパワートレインは5.7ℓのV8と3.5ℓのV6が選べたが、新型は時流を汲んで3.6ℓ V6のペンタスター・エンジンに統一されている。このユニットに組み合わされるのは、ヨーロッパでは既に主流になりつつあるZF製の電子制御8段A/Tであり、先代が搭載していた4〜5速のA/Tとは段違いのアップデートが施されたかたちになる。また昨今の高級車に欠かせないアダプティブクルーズコントロールとブラインドスポットモニター(ラグジュアリーのみ)やアダプティブヘッドライトなどのレーダーや小型カメラを活用する最新の電子デバイスがひと通り組み込まれている点にも現代高級車のフルモデルチェンジらしさが感じられる。
少し重めのドアを開けてドライバーズシートに座ると、新型300の変貌ぶりがはっきりとする。インテリアに関しては、エクステリアよりもさらに高級感が増しているのである。中央にナビシステムがレイアウトされた立体的なダッシュパネルや、そこから左右のドアに続くラインにはゆったりとした独特の調和があり、大雑把なアメ車感が排除されている。インテリアの全体的な意匠は良くも悪くもドイツ的にまとめられているのだが、裏を返せばこれこそ世界的な成功を狙ったモデルらしいクオリティといえるのかもしれない。