ロータス・エミーラV6ファーストエディション V6を推す理由 エンジンの違いが生み出す2通りの個性

公開 : 2023.10.28 18:45

EV且つSUVであるロータス・エレトレが発表されたこのご時世に、時をほぼ同じくして同メーカーが放ったスーパーチャージドV6を積む、純ガソリン車でMT設定を残すエミーラ。今、試乗を通じて見えてくるものを探ります。

V6と直4 思いのほかキャラが違う2台

箱根の山道において、最新にしてロータス最後のガソリンエンジン車であるエミーラV6ファーストエディションを試乗することができた。それから本稿を書くまでの間に急遽イギリスに赴くことになり、筆者はロータスの本拠地であるヘセルにおいて出来立てホヤホヤのエミーラのI4(直列4気筒)モデルを試乗することができてしまった。

エンバーゴ(情報解禁期限)の関係でV6モデルを飛び越して書きあがった記事が、先のインプレッションなのである。

ロータス・エミーラV6ファーストエディション
ロータス・エミーラV6ファーストエディション

今回はハナッからエミーラV6の箱根試乗に関する原稿だったはずなのだが、前記の通り直近にイギリスであらためてV6と直4を比較試乗できたおかげで原稿の主旨がインプレから考察的なものに変わっている。V6と直4のエミーラに、エンジン違いという以上の意味があることがわかってきたのである。

その意味に関してはすでに先の原稿で触れているので、いま一度、エミーラI4の記事に目を通してほしい。手短に言ってしまえば、2台はエンジン以外の部分にも違いがあり、キャラクター付けが異なる兄弟車のような関係性を秘めているということである。

偶然にして必然 V6+MT誕生の理由?

自動車の世界では同じエンジンベイに直4のみならず、より大きなV6やV8すら搭載している例が珍しくない。だがそれらはフロントエンジン車である場合がほとんどで、ミッドシップは稀だ。稀なうえにエミーラの場合、V6と直4でサブフレームの材質もリアアシも別物なのだから「狙いが異なる別キャラ」という筆者の仮説にもいくらか信憑性がありそうな気がするのだがどうか?

自動車メーカーが配布するリリースには触れてほしいことが記され、そうでないことは伏せられているのが普通だ。だからなのかはわからないが、今回エミーラのアルミ接着バスタブモノコックが、エヴォーラの流れを汲んだものであることは書かれていない。

ロータス・エミーラV6ファーストエディション
ロータス・エミーラV6ファーストエディション

だがロータスの会社の規模や、エリーゼやエキシージSには存在しなかったエミーラの運転席後ろのラゲッジスペースの存在、そしてV6エンジンとサスペンション関係を保持するサブフレームが「おなじみ」の鋼板溶接ボックス構造であることを考えれば、その成り立ちは容易に察しがつくはずだ。

だからこそエミーラV6はエヴォーラのそれを、いま一度スポーティに洗練させたようなクルマに仕上がっているのである。具体的にはエミーラI4より柔らかめのアシとV6エンジンの重心高を利用し、全体の動きをナチュラルで予測しやすいものにしている。

そういったツアラー的な性格であればトルコンATモデルの方が方向性としては正しいかもしれない。だが一方で4気筒エンジンの供給元であるメルセデスAMGはMTギアボックスを持ち合わせていない。ロータスの伝統を含めて考えれば、いきなりMTはもうありませんという展開は急すぎる。V6+MTモデルの誕生は必然だったのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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