フルEVか合成燃料か スーパーカーの選ぶべき道は? ランボルギーニ

公開 : 2023.10.30 18:05

・ランボルギーニの次世代スーパーカー、完全EV化にはまだ慎重。
・合成燃料に期待するも、将来性は不透明…。しばらく見守る姿勢。
・「日常的」なクルマはフルEVしかない、とCEO語る。

未来は不透明 しばらく見守る

イタリアの自動車メーカーであるランボルギーニは、EV(電気自動車)のスーパーカー投入に関してやや慎重な姿勢を見せている。一部モデルではハイブリッドを採用するなど電動化を進めているが、同時にeフューエルなどの合成燃料にも一定の期待を寄せているようだ。

ランボルギーニのステファン・ヴィンケルマン会長兼CEOは取材に対し、「まだ数年はドアを開けておく余裕がある」と語った。

スーパーカーのレヴエルトにはPHEVパワートレインが採用されている。
スーパーカーのレヴエルトにはPHEVパワートレインが採用されている。

「合成燃料を使うスポーツカーは、当社にとってより容易な飛躍ではありますが、立法府が合成燃料についてどのような決定を下すか、また、その実現可能性について世界的な合意を得られるかどうかを見守らなければなりません」

「当社はグローバル企業ですから、ある地域だけでしか許されないのでは意味がありません。当社の日常的なクルマ(SUVのウルスと次期ランザドール)は、10年以内にどちらも完全電動化する計画です。スーパースポーツカーについてはハイブリッド化し、今から8、9年後(2030年代初頭)まで残り続けるでしょう。新型スポーツカーの一般的な開発サイクルが4年であることを考えると、状況が明らかになるまで見守る時間はまだあるのです」

続いてヴィンケルマン氏は、「若い購買層がサステイナビリティを求める傾向にあることは確かです。ブランド全体でのクルマの排出量はごくわずかですが、社会的責任感はもっと大きなものであり、尊重しなければなりません」と話す。

「実際のところ、既存のスポーツカーの顧客層のうち、どの程度の方がすでにBEV(バッテリー式電気自動車)を検討しているかもわかりません。まだ尋ねてさえいないのです。まずは、信頼できる方法で準備しなければなりません。正しい順序で物事を進める必要があります。例えばランザドールでは、現実的なものを、というコンセプトとビジョンを持ってやってきました。人々がそれを見て初めて、市場が準備できているかどうかを判断することができるのです」

「日常的」なクルマはフルEVしかない

しかしヴィンケルマン氏は、ランボルギーニが完全に電動化することに対して躊躇はないと言う。「5、6年前を振り返ると、ハイブリッド化するという決断は難しいものでした。誰もそれが受け入れられるとは思っていませんでした。世論はスナップショットではなく、フィルムとして考えなければなりません」

「フルBEVのスポーツカーがICE(内燃エンジン)よりもさらにエモーショナルになる瞬間が来るのは明らかです。パワーはすでに素晴らしい。わたし達が証明しなければならないのは、性能ではなく、ハンドリングのダイナミズムと興奮なのです」

バッテリーEVのランザドール・コンセプト
バッテリーEVのランザドール・コンセプト

「実際、バッテリーのエネルギー密度によって、現在のICE車よりもさらに俊敏なEVスーパーカーを作ることが可能になる時代が、すでに見えています。そのようなクルマはオーナーにとってもさらにエモーショナルなものになるでしょう」

ヴィンケルマン氏はまた、この技術は他社ブランドが先行するのを待つのではなく、自社が開発し、証明するものだと付け加えた。

「当社がすでにファーストワン(一番手)でないことはわかっています。しかし、そこに到達したとき、当社はベストワンでありたいのです」

「わたし個人としては、スーパースポーツカーはeフューエル(合成燃料)とBEVのどちらがいいか決めていません。デイリードライバー向けモデルについては、EVに代わるものはありません。合成燃料に対するわたしの疑問は、拡張性の問題だけです。2035年になっても、まだ何十億台もの内燃エンジンを搭載したクルマが走っているはずで、世界的な排出量に最大の変化をもたらしたいのであれば、理論的にはeフューエルがベストです。しかし、わたしはそれが実現可能だとは確信できていません」

「今、業界全体がすでにバッテリー技術に投資しています。ランボルギーニのようなブランドの利益のためだけでなく、業界として、より大きなコンセンサスと集中が必要なのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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