マセラティ・グレカーレ 詳細データテスト 運転を楽しめる駆動系 サスはソフトすぎる もう少し安く

公開 : 2023.10.28 20:25  更新 : 2023.11.10 06:01

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

もしツインターボV6がハイパフォーマンスSUVへの期待に応えるものだとしたら、トロフェオにサスペンションはその反対だ。エントリーグレードのGTを除くすべてのグレカーレは、エアサスペンションとアダプティブダンパーを備える。

もっとも、このクラスでは特別なことではなく、ポルシェ・マカンGTSやメルセデスAMG GLC63も同様だ。しかし、マカン乗り心地が張り詰めているのに対して、グレカーレはもっとリラックスしたものとなっている。

エアサスペンションは思いがけないほどソフトで、日常使いはしやすいのだが、走り志向のドライバーは路面を感じられないと不満を唱えるかもしれない。
エアサスペンションは思いがけないほどソフトで、日常使いはしやすいのだが、走り志向のドライバーは路面を感じられないと不満を唱えるかもしれない。    JACK HARRISON

コンフォート寄りのモードでは、徹底してソフトで、最初のうちは乗り心地に高級感を感じる。しかし、本当に高級と言えるほどふんわりしたものではない。というのも、サスペンションには抑えと密度に欠けているからだ。ややダンピングが足りず、必要以上にボディが動いてしまう。ある程度のバンプや路面の穴を踏んでもフラットに走れる反面、入力が大きいとヘッドトスが出たり、衝撃が入ってきたりする。

この手の背が高いクルマで、乗り心地やハンドリングをうまく仕立てるのは難しい。それを考えれば、グレカーレはこのクラスとしてはかなり衝撃吸収の効いた乗り心地だ。とはいえ、やや困惑させられるところがある。

走行モードをハードなほうに切り替えれば、サスペンションは硬くなり、ボディコントロールもタイトになることを期待するだろう。ある程度はそうなのだが、まとまりのない感じは払拭できない。フェラーリのように、すべてのモードがプログレッシブにアグレッシブさを増し、個別調整できるモードはないが、ダンパーだけはソフトにすることができる。

スポーツモードであっても、コーナーへ飛び込むとサスペンションは初期のボディの動きを多く生む。自信を持って飛ばせるようになるまでには、かなりの慣れが必要だ。理想的なことをいうなら、ベストなボディコントロールを得るにはコルサモードを選びたくなる。ところが、それではESCがオフになってしまう。そこは不要に思える。

そこまでしても、レスポンスには遅れがあり、コーナーの脱出でパワーをかけると、リアが沈もうとしてフロント内輪が跳ねてしまう。

シャシーのそのほかの部分が、このクルマを思いがけないほど直感的にしてくれるだけに残念だ。ステアリングは速くて軽く、イタリア車らしいもの。低速では軽すぎるというテスターもいたが、速度と荷重がますほどに手応えは重くなり、正確にグリップレベルを見極めさせてくれる。レシオはクイックだが、切れすぎたり神経質に感じさせられたりすることはない。

マカンやGLC63とは異なり、4WDシステムは冗談みたいにリア寄りで、電子制御デフがおもしろいくらいすばらしいシャシーにしてくれる。スタビリティ系システムがオンでも、トロフェオはコーナーへ飛び込み、痛快なまでに自分を中心に回るような感覚を味わえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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