クレア・ウイリアムズ・インタビュー ー F1の技術をロードカーに展開

公開 : 2014.11.01 22:40  更新 : 2017.06.01 02:11

  • クレイグ・ウィルソン

  • パット・シモンズ

”父や母は、私が家業に首を突っ込むことを、相変わらずあまり快くは思っていませんでしたが、当の私はウイリアムズを世界でもっとも成功したチームにすると心に決めていたのです。とにかく早く一人前にならなくては、と強く思っていました”

クレアが指揮する ’新生ウイリアムズ’ は、マーケティング部のヘッド、ジム・ライトからの電話によって、2010年に始まった。電話の向こうでジムはクレアに ”チームがあなたを必要している” と言った。

”このことを父に話しているのでしょうか? と聞いたのですが、もちろん話していませんでした。父が知ったらあなたはクビになるかもしれませんよ、と。しかしジムは上手くやってのける自信があったようなのです。そして実際にも上手くやりました” この時すでにクレアはチームの全てを把握していため、会社に貢献できるまでにそう時間はかからなかった。

しかし皮肉にも彼女が正式にウイリアムズでのキャリアをスタートさせた時、チームはどん底だった。マーケティングのチーフになった2011年までには、コンストラクターズ・チャンピオンシップで9位にまで転落していたのだ。

2012年には、収入減少を補いきれなくなり、フランクフルト証券取引所に自社の株式を公開、直後にフランク・ウイリアムズのかわりに彼女自身が代表になった。スペインGPでパストール・マルドナドが予想だにしない優勝を果たし、チームはなんとか8位に踏みとどまった。

2013年のシーズンは、マーケティング部門やコミュニケーション部門、広告部門を股にかけてクレアは代表になった。これが失敗の要因となったのだった。

”ゾッとする事態でした” とクレア。”われわれは個々の部門を一つのチームに引き入れることによって状況の改善に挑戦したのです。そしてわれわれは600あまりの人々を1つのグループにまとめることを絶対にしてはならないということを、苦い経験として学んだのです”

”そしてその後、われわれはグループの大規模な変更を行いました。何度も会議を開き、3-4月までには、いまでも稼働しているプランを打ち立てたのです”

”一番辛かったのは、オーストラリアGPで思うような結果が出なかったときに、どんどんチームの士気が下がっていくことを目の当たりにすることでした。たとえどんなに2014年シーズンに希望があると分かっていても、チームを離れることを考え始めた優秀なスタッフを引き止めることは、とてもむずかしいことでした”

”問題の核心は、統率力だったのです。幾度の苦難にも直面した、非常に優秀な技術者がいたにもかかわらず、組織の問題が彼らを効率よく働かせる足枷となってしまっていたのでした”

”フランクやパトリック・ヘッド(1977年、チーム再出発時の発起人)をトップとした、テクニカル・ディレクターへと続くピラミッド式の構造が、その時既にうまく機能していなかったのです” と言う。”改善の手始めにパット・シモンズをTD(テクニカル・ディレクター)として採用し、その後に様々の部門の指揮官を次々に外部から呼びました”

また、2014年からはエンジンのサプライヤーをルノーからメルセデスに変更した。今となっては最良の選択だったと言えるが、当初、ルノーと関係を絶ち、メルセデスと新たに契約を交わすのは非常に難しいことだったのだそうだ。と言うのも、長い間、ルノーはウイリアムズにとって良きパートナーだったし、ルノーの3勝に対し、13勝もあげているメルセデスは引く手数多のメーカーだったからだ。

しかし難局を乗り越えた後は、コンストラクターズ・チャンピオンシップで3位を獲得し、中盤のオーストリアGPのバルテリ・ボッタスの表彰台以来、合計で5回以上、表彰式に立つことができた。

さらなる改善を求められていた時期であることは十分に理解してはいたが、オックスフォード州グローヴにある本部の人々の表情には次第に笑顔が戻り始めた。”その前のシーズンならば、誰かがタイヤ・ブランケットを間違った方法で装着していたためにピット・ストップで2秒ロスしたとしてもほとんど問題になりませんでした” とクレア。”当時、われわれの間に言い争いのようなものはなかったのです。しかし、いまは状況がまったく違います”

この時既にインタビュー開始から1時間半が経過していた。そしてここにきてようやく、クレアがわれわれにもっとも伝えようとしていたことが分かったのだった。それは、ニューカマーだからこそできる発想でありながら、冷静な判断のうえでの決意だった。”クレア・ウイリアムズさん。あなたにできることはどんなものだとお考えですか?”

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