ミラーは911 ブレーキは968 アウディRS2 アバント  英国版中古車ガイド 元祖俊足ワゴン(1)

公開 : 2023.11.05 17:45

アウディ「RS」シリーズの封を切った1994年の「2」 スーパーカーxワゴンをポルシェと共同開発 近年魅力を増すクラシックを英国編集部がご紹介

ドアミラーは911 ブレーキとホイールは968

アウディ初の「RS」として、スポーツクワトロより強力で、当時ラインナップ最速の座に君臨したのがRS2 アバントだ。フォルクスワーゲン・グループのトップの座へ就任する直前、フェルディナント・ピエヒ氏によって進められた型破りのモデルといえた。

ポルシェとの共同プロジェクトとして生み出されたRS2は、BMW M5 ツーリングに対するアウディの回答でもあった。当時のAUTOCARのテストでは、0-48km/h加速でマクラーレンF1を凌駕する数字を記録している。販売面でも、当初の期待を上回った。

アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)
アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)

ベースとなったのは、その頃のアウディ80 アバント。ドイツ・インゴルシュタットでボディシェルが製造されると、メルセデス・ベンツ500Eを製造していた、ポルシェのツフェンハウゼン工場へ輸送された。

そこで専用エンジンとトランスミッション、ブレーキ、サスペンションを実装。燃料ポンプとドアミラー、フロントウインカーなどはポルシェ911のものが、ブレーキと17インチ・ホイールは968 クラブスポーツのものが組み付けられた。

目玉といえる直列5気筒ターボエンジンは、S2の1.1barから1.4barへブースト圧を高めた大径ターボチャージャーで過給。ハイリフトカムに高性能エアフィルター、インタークーラー、インジェクター、高効率な排気マニフォールドなどで武装している。

ボッシュ社製のマネージメント・システムも、専用マッピング。その結果、319psと41.6kg-mを獲得した。トランスミッションは6速マニュアルだ。

生産数は2891台 定番カラーのノガロ・ブルー

ボディシェルはツフェンハウゼン工場で強化。フロントバンパーには大きなエアインテークが開けられ、ラジエターとブレーキの冷却効率を向上させた。アルミホイールと相まって、スポーティで好戦的な見た目に仕上がっている。

ノガロ・ブルーという、僅かにグレーがかったブルーが定番カラー。アウディに加えて、ポルシェのロゴも随所へあしらわれているのが興味深い。

アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)
アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)

車高は80 アバントから40mmも落とされていたが、オーナーの好みによって、更にローダウンされている例も少なくない。ボディロールを減らし、鋭い回頭性を追求して。

オプションも複数用意された。高性能ブレーキにサンルーフ、シートヒーター、ブラックのナッパレザー・インテリア、カーボンファイバーかウッドパネルの化粧トリム、ルーフレール、オートエアコンなどが選べた。

ちなみに右ハンドル車の場合、サンルーフは標準装備。内装は、シルバーかブルーのアルカンターラとレザーの2トーン仕立てが通常だった。

予定では2200台の生産が計画されていたが、人気に押され、2891台がラインオフしている。主要市場は欧州だったものの、180台の右ハンドル車が製造され、英国のほか香港、ニュージーランドなどへ輸出されている。日本にも僅かながら生息する。

このRS2は、アバントのみだとご記憶かもしれないが、実はサルーンも作られている。4台だけだが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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