ターボラグが悪癖・・でも面白い アウディRS2 アバント 英国版中古車ガイド 元祖俊足ワゴン(2)

公開 : 2023.11.05 17:46

アウディ「RS」シリーズの封を切った1994年の「2」 スーパーカーxワゴンをポルシェと共同開発 近年魅力を増すクラシックを英国編集部がご紹介

病みつきになるドッカンターボ的な振る舞い

アウディRS2 アバントの悪癖であり、面白さともいえるのが、短くないターボラグと回転数が3000rpmを超えてからの爆発的なパワーの放出。追い越し加速でもたつく場面はあるものの、慣れてしまえば、ドッカンターボ的な振る舞いが病みつきになるはず。

2226ccの直列5気筒ガソリンエンジンと、ターボチャージャーは基本的に高耐久。ウエストゲートの不調で本来の性能を引き出せなかったり、マスエアフロー・センサーの劣化で点火不良や排気ガスが黒く煙る場合がある。

アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)
アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)

高負荷時にパワーが思ったように発揮されない症例は、燃料ポンプの不具合かもしれない。オリジナルでもかなりの速さを披露するが、過去のオーナーによって更に大きなターボやインタークーラー、高効率な吸排気系などが組まれていることも珍しくない。

6速マニュアルのシフトフィールが滑らかさに欠く場合は、シンクロメッシュの摩耗が疑われる。特に2速へ入れる際に、不自然な異音や振動がないか確かめる。単純にゲートを選びにくい場合は、リンケージの劣化が原因かもしれない。

リア・ディファレンシャルはロックが可能。正常に機能するか確かめたい。ただし、グリップの良い舗装路では多用しない方が賢明だろう。

社外サスは珍しくない 取引価格は堅調に推移

新車当時は、グランドツアラー志向に振られた乗り心地や操縦性を批判する人もいた。しかしこれは、スーパーカーには速さが求められても、硬い乗り心地が必要だとは考えなかった、アウディによる判断の結果だった。

確かにノーマルのサスペンションは、コーナリング時のボディロールが小さくなかった。それでも、決して鈍重な身のこなしだったわけではない。

アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)
アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)

多くのRS2は、鋭い操縦性を求めてサスペンションが社外品へ交換されている。H&Rやビルシュタインなど、各社から選択肢がリリースされていた。ホイールとブレーキは、ポルシェのアイテムが標準。予め、オリジナルかどうか確認したい。

タイヤは、ダンロップ SPスポーツ8000が純正品だったが、現在は廃盤になっている。サイズは245/40ZR17が組まれていた。これから交換する場合は、ダンロップ・スポーツマックスRT2などが適したチョイスになるだろう。

スーパーカーとステーションワゴンを掛け合わせたRS2 アバントの稀有な成り立ちは、家族持ちのカーマニアへ新車時から強く響いてきた。クラシックカーとなった現在でも注目度は高く、残存数より需要の方が多い。取引価格も堅調に推移している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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