海外の「一時抹消登録」 クルマの長期保管に オンラインで手続き無料の英国SORN制度とは

公開 : 2023.11.01 18:05

・英国のSORN(一時抹消登録)について解説。
・オンラインで手続き可能、費用も無料。数分で完了することも。
・一時抹消登録後に公道を走った場合の罰金はある?

英国の一時抹消登録「SORN」について解説

長期間の旅行や生活環境の変化、あるいは修理といった理由で、自慢の愛車を一時的に使わなくなることもあるだろう。クルマを長期保管する場合、日本では「一時抹消登録手続き」を行うと、公道を走れなくなる代わりに保険料や税金がかからなくなる。

海外にも同様の仕組みがあり、多くのオーナーが利用している。今回は英国のSORN(Statutory Off Road Notification)制度について紹介したい。日本の制度との違いについて、少しでも参考になれば幸いだ。

英国でSORNに登録すると保険料や税金がかからなくなる。長期保管の際には便利だ。
英国でSORNに登録すると保険料や税金がかからなくなる。長期保管の際には便利だ。

SORNの申請方法

英国ではクルマを2週間以上運転しない場合、SORNを申請することができる。申請は無料で、オンラインであれば数分で手続きが完了する。

SORNの申請方法は3つある。1つ目は、オンラインで英DVLA(運転免許庁)のウェブサイトから申請するというもの。車種、型式、登録番号が必要だ。すぐにSORN登録したい場合は、V5C(クルマの登録証)に記載の11桁の参照番号が必要となる。

SORNはオンラインでの手続きが楽。いくつか書類が必要だが、基本的に費用はかからない。
SORNはオンラインでの手続きが楽。いくつか書類が必要だが、基本的に費用はかからない。

なお、DVLAが税金の払い戻しをしてくれるのは1か月分のみなので、暦月の初日からSORN登録する方が金銭的にはお得だ。その場合、V11(自動車税の納税通知書)に記載されている16桁の参照番号が必要である。

このようにオンラインでの申請が最も手軽と言えるが、第三者に手続きを代行してもらうこともできる。「SORN my car」でググると、有料で代行サービスを提供している企業が見つかるかもしれない。

SORNは郵送でも申請できる。必要なV890(申請書)はDVLAのウェブサイトからダウンロードするか、郵便局で受け取とろう。必要事項を記入し、DVLA宛に送ればよい(DVLA, Swansea, SA99 1AR)

電話での申請も可能だ。クルマの詳細情報や参照番号を手元に用意し、DVLAに直接電話するのだ(TEL:0300-123-4321)。

郵送または電話で申請した場合、DVLAから1か月以内に確認書が送られてくるはずだ。届かない場合は、必ず電話で問い合わせること。申請しただけではSORN登録が完了したことにならない。

SORNは必要? 違反した際の罰金は?

――なぜSORN申請が必要なのか?
英国では、公道に駐車または走行するすべてのクルマに納税(正式にはVED、Vehicle Excise Duty)と保険加入の義務がある。

しかし、クルマを長期間使用せず、ガレージや私有地に保管できる場合は、VEDも保険も必要ない(ただし、基本的な火災・盗難保険には加入しておくことをお勧めする)。そのためには、クルマのオーナーはSORNを申請しなければならない。

英国のクラシックカー文化の発展にもSORNは寄与しているのかもしれない。
英国のクラシックカー文化の発展にもSORNは寄与しているのかもしれない。

――SORNを申請せずに放置するとどうなる?
VEDを失効させたまま、SORNを申請しなかった場合、たとえクルマの使用を止めて私有地に保管していたとしても、罰金が発生する可能性がある。最初にDVLAから警告書が発行され、その後80ポンド(28日以内に支払うと40ポンドに減額)の罰金が課される。

DVLAはまた、クルマの保険加入状況をデータベースと照合する権限がある。もし保険の有効期限が切れていた場合、さらに100ポンドの罰金が課される。ここまですべてを無視した場合、裁判にかけられ、最高1000ポンドの罰金が課される可能性がある。

――SORNの有効期間は? 更新は必要?
SORNを更新する必要はない。ただし、SORN付きのクルマを売却し、新しいオーナーがSORNを引き継ぎたい場合は、新たに申請する必要がある。

――SORN付きのクルマを公道で運転することはできる?
基本的にはできない。クルマが課税されておらず、保険にも加入していないため、違法に運転されているとみなされる。路上に設置されているANPR(自動ナンバープレート認識)カメラでも見つかってしまう。違反が認められた場合、最高2500ポンドの罰金が課せられる。

SORN付きのクルマを公道で走らせることができるのは、事前に予約したMOT(英国の車検制度)のために移動する場合のみで、その際にも、保険会社から適切な保証を得なければならない。

――SORNを解除する方法
SORNの解除手続きはとても簡単だ。オンライン、郵送、電話で行うことができる。納税はもちろん、MOTを受けなければならないが、SORN登録前のように公道を走れるようになる。40年以上前に製造または登録されたクラシックカーはMOT免除となるが、DVLAのヒストリックカー登録で免除を申告する必要がある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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