ディフェンダー130こと、ロングボディ仕様の懐深さ 最強ファミリーカーかアウトドア・パリピ仕様か

公開 : 2023.11.01 22:05

ここにも元祖ランドローバーの味

インテリア目線でも、エボニーという温かみある濃厚グレー色のウィンザーレザーが用いられシート表皮は高級感を感じさせ、ナノイーXまで備えた空気清浄システムプラスはスマートフォンから遠隔操作も可能となっている。

標準装備というパノラミックガラスルーフは前列シートだけでなく、3列目にも2つ目が備わり、洞窟かトンネルのような室内空間ではない。90や110と同じく、11.4インチのタッチスクリーンによるインフォテイメントシステム「Pivi Pro」も、洗練ポイントだ。

ディフェンダー130の3列目シート(内装色:エボニー/ウィンザーレザーシート)
ディフェンダー130の3列目シート(内装色:エボニー/ウィンザーレザーシート)    神村聖

一方、いい意味で簡素でスポーティなシート自体の薄さや、ドアパネルやセンターコンソールのウッドパネルがヘックスのビス留めになっている辺りは、ほどよい「武骨さミックス」といえる。

だから、広々としてラグジュアリー化されたインテリアとはいえ、元祖ランドローバーや旧来のディフェンダーがもっていた兵員輸送車かサファリ探索ツアーのような趣が、漂わないこともない。

スカウトかレンジャーのようにキャンプしたい家族や、グランピング好きのワイルドなパリピ仕様にもなるだろう。そこが、新型ランクル・プラド辺りと、ジャンルは似るもテイストが異なるであろうところだ。

MHEVディーゼル 洗練と武骨が同居

ドライバーズシートに落ち着くとさすが全高1970mm、周りを見渡すと視線位置は、国産のミドルサイズ・ミニバンの屋根とほぼ同じレベルにあるほど、高い。

センターコンソールというよりは、ダッシュボードに寄せられた8速スポーツモード付きATは、レバーもパターンもオーソドックス。そして走り出せば、変速も滑らかで巨躯に似合わぬクセの少ないドライバビリティゆえ、意外なほどに操り易い。回転半径が6.1mに及ぶことすら、忘れそうだ。

ディフェンダー130 D300
ディフェンダー130 D300    神村聖

最大の要因は、従来のフレームボディから「D7x」と呼ばれるアルミニウムモノコックに一新され、3倍の強度を与えられたというアーキテクチャそのものにある。

確かに「iAWD」という前後車軸のトルク配分を最適化する独自のシステムや、電子制御エアサスにブレーキによるベクタリングも備えるが、フロントにダブルウィッシュボーン式、リアにインテグラルマルチリンク式という4輪独立懸架サスを採用し、とくにフロントは最大430mmものストローク量を確保している。ようは体幹ごと四肢ごと強靭そのもので、インテリジェント制御し甲斐のありそうな、メカニカルとしてたっぷりのキャパシティがあるということだ。

今回は市街地や首都高のみでの試乗だったが、正直、48Vのスターター・ジェネレーターによるMEHVの効きは、2540kgの車重を前にゼロではなかろうが強く体感できるものではなかった。むしろD300という直6ディーゼルの、誠実かつスムーズな働きっぷりの方が印象的だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。

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