ベントレー・コンティネンタルGTスピード vs メルセデス・ベンツS63 AMGクーペ
公開 : 2014.11.04 23:50 更新 : 2017.05.29 19:32
正式な数ではないけれど、英国政府は、100ほどの600m級の山々が国内に存在するとみているようだ。
そのうちの多くはブレコン・ビーコン国立公園や、スノードニア国立公園などがあるウェールズに密集しているとお思いの方が多いかも知れないが、じつはこれら国立公園の中には8つしか山がない。
そのうちの最も有名な2つは、南ウェールズはブレコンの南西部に裾野を広げる886mのペイ・イ・ファン山と、ウェールズ北西部にある1085mのスノードニア山だ。前者は南部を、後者は北部を代表する高山である。
そんな雄大な山々にリンクさせるかのように、今回は2台の代表的なグランドツアーを用意した。そしておのおののパワーを最大限に引き出しながら比較するためには、ペイ・イ・ファン山とスノードニア山に至るまでのルートこそ、うってつけだと考えたのだ。
2台のうちの1台であるベントレー・コンチネンタルGTは、2003年のデビュー以来、長きにわたってボディの基本デザインを維持し続けてきた。実際は包括的なアップデートが行われているのだが、基本的にはデビュー当時の姿形そのままである。
GTスピードの心臓部である6.0ℓツインターボW12エンジンも大きな変更は受けていない。出力こそ10psが増強され、635psとなっているが、10年以上前のデビュー当時でさえ既に560psを発生していたのだから、さして大きな違いはないとみなしていいだろう。
細やかな変更に徹したということはつまり、一貫性のあるキャラクターを構成する手助けにもなる。ならば、新しいクルマに比べて、いまだに色鮮やかな存在であり続けているのだろうか、ということを本ページで解明していこうと思っているのだ。
ペイ・イ・ファン山に登る際の拠点となる、A470号線沿いのストリー・アームズ・ビジターセンターの駐車場の向かいに停めてあるのはメルセデス・ベンツSクラス・クーペ。あるいはCLクラスの後継モデルと言ったほうが分かりやすいかもしれない。中でもテストに連れ出すグレードはS63 AMG。5.5ℓツイン-ターボV8エンジンを搭載し、585psを発揮するが、駆動方式はコンチネンタルGTの4WDとは異なるFR。全長全高ともにこちらの方が大きいものの車重は250kg軽い。
したがってパワー・ウエイト・レシオ、トルク・ウエイト・レシオともに、ほんの僅かではあるがS63の方が優勢だ。コンチネンタルGTスピードは、今もなおベントレーのトップ・モデルという立ち位置なのだが、ルックスにはメルセデスほどの押し出し感はなく、どちらかと言うとさらに気筒数の少ないエンジンを持ったメルセデス程度にとどまっている。
ベントレーのファンにとっては、価格差も頭を抱える点のひとつである。£156,700(2,817万円)という価格は、約500万円もS63より高価だということになる。コンチネンタルGTを買うお金で、S63と遊び専用のロータス・エリーゼまで買えてしまうと考えれば、この価格差は決して小さいものではない。
隣に並べて、コンチネンタルが小さく見えてくるクルマと言えば、私は真っ先にロールス・ロイス・レイスを思い出すのだが、S63も例外ではない。事実、Sクラスのクーペはサルーンに比べればホイールベースは短いのだが、それでもコンチネンタルよりも221mm長い5027mmもの全長があり、これは4ドアのパナメーラやアストン・マーティン・ラピードSなどのライバルよりも長いことになる。2台を隣同士に並べてみれば、確かにS63が身に纏うラインは優雅で美しいのだけれど、コンパクトで引き締まっていて、速そうに見えるのは疑いようもなくベントレーの方だ。