空冷ポルシェの回転数が1万2000rpmに? 4バルブ化で出力向上 改造キット発売
公開 : 2023.11.03 18:05
・964/993世代911向けのエンジンアップグレードキットが発売。
・ポルシェの空冷エンジン「M64」を4バルブ化し、性能底上げ。
・最高回転数1万2000rpm、最高出力は400~450psか。
究極の空冷ポルシェを作るチャンス?
英国のスウィンドン・パワートレイン(Swindon Powertrain)は、レース用エンジンからクラシックカー向けの電気駆動ユニットまで、幅広いパワートレインを製造するメーカーである。10月、同社はポルシェの空冷エンジン用の4バルブシリンダーヘッドを発売した。
「M64シリンダーヘッドキット」と呼ばれるこの製品は、964および993世代の911に搭載されるM64エンジンに適合するアップグレードキットだ。
吸気バルブと排気バルブを2本ずつ(4バルブ)に倍増することで、バルブシートの面積を拡大し、低回転域での流入速度を損なうことなく、高回転域でより多くの空気をエンジンに送り込む。自然吸気エンジンにおいては、低回転域でのトルクと高回転域での出力、そして回転数の向上が期待できる。
つまるところ、スウィンドン・パワートレインのM64シリンダーヘッドキットは、ポルシェの空冷エンジンの性能を底上げし、(ボトムエンドが耐えられれば)最高1万2000rpmまで回転させることができるようになる。993世代911の場合、レッドラインが6900rpmから大きく飛躍し、吸気のピーク流量は40%、排気流量は66%改善されるという。
スウィンドン・パワートレインのラファエル・カイエ社長によれば、エンジン出力はリッターあたり約125psに達するという。具体的な最高出力は明かされていないが、標準的なM64エンジンの272psに対し、400psから450psに相当する計算だ。
ポルシェ純正の964および993世代のヘッドは、もともとシングルカムで1シリンダーあたり2バルブである。そのため、4バルブと2本のカムシャフトを同じスペースに収め、さらに1本ではなく2本のカムを駆動するのは、かなりの難題だったはずだ。
その解決策は、吸気カムから排気カムを1組のギアで駆動するというものであった。これにより純正のカムシャフトドライブチェーン、ケーシング、そして関連するすべての部品が改造を必要とせず、そのまま使用することができた。
ヘッドは、鋳造用アルミニウム合金「A356(AC4CH)」を使用し、カムチェストとともにCNC加工される。その他、993のパワーステアリングを維持するためのパワーステアリングドライブや、4バルブ対応の特製ピストン、エンジンビルダーの好みに合わせたカスタムカムプロファイルも用意されている。
4バルブ設計にはもう1つ利点がある。バルブ1本あたりのサイズが2バルブよりも小さく、軽いバルブスプリングを使用するため、バルブトレインへの負荷を軽減できるのだ。
アップグレードキットも全体的に軽量化されている。吸気バルブも排気バルブもチタン製で、バルブコレット、シム、フィンガーフォロワー、シャフトなどの小さな部品もすべてチタン製だ。その結果、キット一式で3.5kgの軽量化を達成した。
価格は3万5940ポンド(約660万円)と、決して気軽なDIY向けキットではなく、熟練したエンジンビルダー向けのものだ。導入するエンジンは、クランクシャフトといった部品の変更など、回転数の上昇と大幅な出力向上に耐えられるよう一定の改造を施さなければならない。
これらのハードルをクリアすると、自然吸気の驚異的なパフォーマンスとサウンドを備えた究極の空冷911が完成するかもしれない。