プジョーの思い描く未来 ステランティス・グループ日本販売1/4を占める同社の展望

公開 : 2023.11.10 11:45

プジョー本社社長に、WEC(世界耐久選手権)富士6時間にて同社の思い描く未来を聞きました。プジョーが現在重要視しているキーワードは、アリュール/エモーション/クオリティの3つとのこと。意外な回答もありました。

プジョーの未来を同社社長に聞く

世界選手権のパドックだけに、WEC(世界耐久選手権)富士6時間は多士済済。フランス本国より3年前にプジョー本社社長に就任したリンダ・ジャクソンが来日し、ステランティス・グループにおける同社の現状をプレス向けに説明した。前職はシトロエン本社の社長だった彼女はコロナ禍以降、プジョー・スポールのレースの機会ある度に世界各地を飛び回っており、富士スピードウェイに足を運ぶのは初となる。

まずプジョーが現在、重要視する価値観のポイントとは3つ。分けても最重要キーワードとなるのが「アリュール(Allure)」で、力強くエキサイティングな内外装のデザインに要約されるという。今「フランス語のアリュール」とは何ぞやを、世界各国の市場で訳出しつつ、事ある毎にそのニュアンスを補っているという。

プジョーの思い描く未来 WEC(世界耐久選手権)富士6時間
プジョーの思い描く未来 WEC(世界耐久選手権)富士6時間

確かにフランス語のそれは、同じ綴りでも英語の「アリュア」オーラやカリスマ性とも少し異なり、動きや振舞いに本来的に備わる強さの一方で、自然に身にまとっているような軽さをも感じさせるところがある「猫科」の続きといったところだ。

ふたつ目は「エモーション(EMOTION)」で、これもプジョーが長らくキーに掲げる概念。視覚と触覚の上で反応に優れたi-コクピットのようなインターフェイス、あるいはプライベートなコクーン体験を約束するインテリアが相当する。

みっつ目は卓越したクオリティ。静的にも動的にもいえるところで、加えてプジョーはテクノロジー面でも先進的でイノベーティブなブランドとして認識されることを目指すという。

これらの価値観を実現するためジャクソン社長が、直近の未来に対するプジョーのアイデアとテクノロジーのショーケースと呼ぶのが、年初にCESで発表された「インセプション」だ。ちなみに今回の会見は「E-3008」が発表に先立つ2日直前に行われた。

ステランティス・グループの日本販売における25%はプジョーである

インセプションのプラットフォームはEV専用に開発された「ステラBEVバイ・デザイン」と呼ばれる4つのEV専用プラットフォームのひとつ「STLAラージ」に基づき、ワンコート塗装のような環境負荷の低い技術を用いる。

一方で次世代コクピットとして、長方形に4つのタッチボタンを配したようなステアリングコントローラー「ハイパースクエア」を採用し、近未来的というより未来そのもののインターフェイスを特徴とする。ちなみにE-3008は、これら新世代プラットフォームのサイズ的に上から2番目「STLAミディアム」をベースとする。

プジョーの思い描く未来 WEC(世界耐久選手権)富士6時間
プジョーの思い描く未来 WEC(世界耐久選手権)富士6時間

ジャクソン社長いわく、このハイパースクエアは2026~27年には市販車に搭載予定で、これを操るのはゲームのようにファンタスティックな経験という。プジョーは2024年までにメインストリームブランドとしてもっともワイドなEVラインナップ揃え、2030年には足元の欧州での販売を100%BEVに移行するという。

日本市場は欧州とインフラは異なるものの、変わると決めたら早く動くだろうと注視しているとか。実際、ステランティス・グループの日本販売における25%がプジョーで、都会的でレジャーとのバランスに敏感な市場であるため、市場の拡大ぺースより早く、シェアを伸ばしたいと野心を見せる。

そしてモータースポーツ活動、とくにWECプログラムはブランド・アンバサダーと捉えており、今年100周年を迎えたル・マン24時間は、フットボールでいうワールドカップ、アメリカのスーパーボウルに相当するスポーツイベントであるという。そこに、デザイン・キューがプジョーそのもので、ウイングレスかつi-コクピットを備えた競技車両である9X8を、他メーカーとまったく異なるテクノロジーかつデザインで走らせることに、大きな意味があるというのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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