プジョーの思い描く未来 ステランティス・グループ日本販売1/4を占める同社の展望

公開 : 2023.11.10 11:45

プジョーの思い描くパワートレイン選択肢とは?

2019年にはシトロエン100周年時のトップという大役を果たした数年後、すっかりスマートながらもアグレッシブで肉食を旨とするプジョーのトップが板についたジャクソン社長。プジョーの現行の電動ラインナップを見渡すと、Bセグではe-208やe-2008といったピュアBEVを擁し、C/DセグメントではPHEVや欧州ではリリース済みのMHEVがある。

足元のフランスでは、政府補助金が適用されないにも関わらず、ルノーのEテック勢やトヨタヤリスクロスといったノン・リチャージャブルのHVが伸長している背景がある。

プジョーの思い描く未来 WEC(世界耐久選手権)富士6時間
プジョーの思い描く未来 WEC(世界耐久選手権)富士6時間

そこでプジョーとして、ストロング・ハイブリッドをパワートレイン選択肢に加える見込みはないのか? 尋ねてみた。彼女の回答は「セグメントのサイズに関わらず、1回充電あたりのレンジは広げる方向で、市場の志向に応じて電動車のレンジは拡大すべきもの。現状のMHEVとPHEV、そして今後強化されていくBEVで、多様な需要をカバーできると考えている」というものだった。

というわけで、ノン・プラグインのストロング・ハイブリッドが、プジョーの直近で思い描く青地図にないことは、意外を通り越して残念ですらある。ちなみに2日後に発表されたE-3008は、230ps/2WD仕様なら航続距離700kmものロングレンジを、320ps/AWDもしくは210ps/2WDの両仕様は525kmを謳っている。

まずBEVという拡大市場でシェアを取ることが戦略要綱で、日本市場で根強いハイブリッド需要より力を入れるべきところなのだろう。

ただしEMP2エボ3でもCMPでも、旧PSAのプラットフォームは頭ひとつ抜けて軽いため、ベルトスターターモーターによるMHEVでも、セグメントB/Cぐらいの車格なら、かなりストロングに走る可能性は無きにしも非ず。

そこが、元より重量級揃いのドイツ車との大きな違いであることは確かで、同じアイシン製AT8速にMHEVを組み合わせたボルボが妙に電気モーターで元気よかったことは印象に残っている。

とはいえ富士6時間のコース上で、プジョー・スポールと9X8は前戦モンツァに続いてラップタイムではトップグループに伍する速さは見せたものの、安定感や細かな信頼性の面でまだ譲るところが目立った。

ドライなら135km/h以上からモーター駆動が認められるなど、BoPにも助けられる側だったが、タイヤの摩耗や燃費など、ハイブリッドはバランスとりに必要な要素が多々あり、それだけまだ煮詰める余地があるのろう。いずれ直近の市販モデルの力点は、より新しい世代のテクノロジーとされるピュアBEV、つまりEV専用プラットフォームを得たE-3008に集中させたいようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

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    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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