アストン マーティンのキー・エレメントについて F1鈴鹿を前に、チーフデザイナーが語り尽くした

公開 : 2023.11.05 19:35

F1鈴鹿ラウンドを数日後に控えた珍しいタイミングでアストン マーティンは「デザインセミナー」を開催しました。副社長兼チーフクリエイティブ・オフィサーのマレク・ライヒマン氏が語るアストンファン必聴の内容とは。

F1鈴鹿ラウンドを数日後に控えたアストン マーティンの「デザインセミナー」

それはアジア・リージョナル・プレジデントのグレゴリー・K・アダムス氏の司会進行で始まった。F1鈴鹿ラウンドを数日後に控え、アストン マーティンが東京・青山のハウス・オブ・アストン マーティンで「デザインセミナー」を開催したのだ。

F1チームのメンバーが帯同するこの時期、多忙を極めるディレクターたちの記者会見は少なからずあるが、レースの時期にデザインについてチーフデザイナーが、これだけコンプリートな枠組みでコメントすることは珍しい。

アストン マーティンのキー・エレメントについて F1鈴鹿を前に、チーフデザイナーが語り尽くした
アストン マーティンのキー・エレメントについて F1鈴鹿を前に、チーフデザイナーが語り尽くした    アストン マーティン

冒頭、鈴鹿でのGPウィークの見通しを説明したのは、ペドロ・デ・ラ・ロサだった。1997年のフォーミュラ・ニッポン・チャンピオンで、105戦もF1GP出走を果たした元ドライバーは、今はアストン マーティンのF1チームをアシストするため、財政マーケティングに籍を置き、広報やPRの仕事をこなしている。

「御殿場に3年間住んだので、日本では戻って来る度にホームのように感じます。私の役割は、マシンを運転して開発することではなく、マスコミやPR関連のやりとり、そして求められればもちろん、フェルナンド(・アロンゾ)やランス・ストロールにアドバイスします。この年齢で優れたレーサーと働けるのは素晴らしいこと」

シンガポールGPは不完全燃焼といえる内容だったが、勝手知ったる鈴鹿での見通しを尋ねられると、デ・ラ・ロサはこう答えた。

「シンガポールは確かに難しいレースで、初めてノーポイントに終わりましたが、今のチームは7回ポディウムに上がっている通り、ポテンシャルを秘めています。だから日本ではポイントを稼ぎたいです。どのチームもそうですが、ミスから学ぶことが大事。シンガポールの不十分な結果は、ラップタイムでのロス、ピットストップでもミスが招いた。鈴鹿は高速サーキットで熟知している分、シミュレーターなどを用いて準備はできています」

そして個人的な鈴鹿の印象については、

「良い想い出が沢山あります。初来日して初めて走った時、朝4時に目が覚めたんです。ピットを出て第1コーナーを周っている時『やっとここまで来たんだ』という感慨が湧きました。スペインに住んでいた時からテレビで観ていた、チャレンジングなサーキットで、ミスを誘うところもある。S字は空力がポイントで、車がアンダーステアだと問題が出やすい。直線の後の左コーナー、130Rも難しい。コース幅も狭くてグラベルに突っ込むこともありうる。ベストを尽くします」

マクラーレンフェラーリでテストドライバー経験も長く、GPドライバーズ・アソシエーション会長も務めた名ドライバーを、若い日の思い出の地である日本で、再び公の場に立たせたアストンマーティンの配慮には、心憎いものがある。そういう老舗のためだからこそ、アロンゾという同国人の手引きもあったとはいえ、貴重な人材が力を尽くしているといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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