アストン マーティンのキー・エレメントについて F1鈴鹿を前に、チーフデザイナーが語り尽くした
公開 : 2023.11.05 19:35
副社長兼チーフクリエイティブ・オフィサーが語る
続いて登壇したのは、副社長兼チーフクリエイティブ・オフィサーのマレク・ライヒマン氏だった。DB12の日本市場ローンチが迫ったこのタイミングで、モダン・アストン マーティンのモデルごとのデザイン・ランゲージや背景を、おさらいして見せたのだ。
「そもそもアストン マーティンの原点はレーシング・スピリット。バンフォード・マーティンではなく、1913年に制作した車でアストン・クリントンのヒルクライムレースを目指したことから始まっています。バンフォードでもマーティンでもなく、電話帳でいちばん上にインデックスされるからと、アストンを名のることを選んだのは、バンフォード夫人の提案でした。コテージ規模から始まって、110年の歴史で11万台しか生産されていません。おそらくトヨタなら3日間で達成される生産台数でしょう」
そして近年のモダン・アストンマーティンの始祖といえるモデルは、DB9だったという。
「2003年に登場したDB9は、アルミのバスタブ構造で溶接のない航空機のようなボディにV12を積んで、アストン マーティンらしい美/パワー/魂を表現しました。一方で私自身が17~8年前に入社した当時の、記念碑的なモデルとして、One-77が挙げられます。これはカーボンとモノコックファイバーという最新の素材を構造をものにしつつ、アルミパネルを手で叩き出すことで、テクノロジーとクラフトマンシップを融合し、DB9とは異なる方向性を示しました」
さらに、同時期に忘れてはならないのが、ジェームズ・ボンド映画との関係であり、DBSが作った新しい流れだ。
「アストン マーティンの歴史の中で、ジェームズ・ボンド映画との1964年来の関係は大事です。数年間ほどBMWに浮気された時期もありましたが、パートナーとしてつねに有機的な関係で、DBSはボンドがアストンに戻ってきた時の車。DB9が優雅でエモーショナルだったのに対し、DBSはストロングで攻撃的。これはその後のヴァルキリーなどへ、ベクトルが拡がっていきました」
ライヒマン氏は、アストン マーティンのラインナップとデザインを「オーケストラ・オブ・キャラクターズ」、つまりそれぞれに強いキャラクターをもつモデルが、密接に絡み合って交響楽的にアストン マーティンの世界観という、ひとつのハーモニーが作り上げられている事実を指摘する。
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