当時は惨めな小型車だった ダラック10/12HP スパイカー12/16HP ベテランカー・ランの功績車(2)
公開 : 2023.11.19 17:46
120年近く昔とは思えないほど走りは洗練
足元には、2枚のフロアヒンジ・ペダルが並ぶ。左側がマルチプレート・クラッチの切り離しで、右側がトランスミッション側に組まれたブレーキ。ウッドリムのステアリングホイール上には、点火タイミングとスロットルのレバーが2本伸びる。
直進時は問題ないものの、レバーはステアリングホイールと一緒に回る。旋回時は、ポジションを思い出しながら操作する必要がある。
ボディの外側で突き出ている、長いシフトレバーを1ノッチ右手前方へ倒し、1速を選択。エンストしないようにエンジンを軽く吹かし、クラッチを滑らかに繋げば、スパイカーは走り始める。
120年近く昔のクルマとは思えないほど、走りは洗練されている。ステアリングレシオが高く、腕には力が必要なものの、遊びは殆どない。4気筒エンジンはトルクが太く、最小限の回転数でもボディを前進させる。
丁寧にダブルクラッチを踏んで、シフトレバーを1ノッチ奥へ倒して2速へ。スロットルレバーを調整する必要はない。現代的なクルマとは異なるプロセスだが、直感的に理解しやすい。
速度を落とすには、ブレーキペダルと、ハンドブレーキ・レバーを上手に操る必要がある。ある程度の力も必要で、短時間では慣れない。
当時は少々惨めな小型車だった
通称ジュヌヴィエーヴことダラックは、正直なところ当時のモデルと比較しても技術的には遅れていた。ベテランカー・クラブ会長を務めていたジョン・ミッチェル氏は、映画による功績を認めつつ、当時は少々惨めな小型車だっただろうと話している。
クランクハンドルを回すと、スパイカーのように1発始動。2365cc直列2気筒エンジンの振動に合わせて、ボディのあちこちが共振する。フロントガラスはそもそもなく、着座位置は周囲を見下ろせるほど高い。
バルクヘッド上のオイルリザーバー・プランジャーを数回動かし、潤滑させて発進。足元には、現代的なモデルと同じくペダルが3枚並ぶ。クラッチペダルとブレーキの間に、ステアリングコラムが伸びている。
トランスミッションは3速マニュアル。シフトレバーは、ウッドリムのステアリングホイールの下から伸び、点火タイミングのレバーと場所を分け合っている。スパイカーとは、異なる運転技術が求められる。
ニュートラルから1ノッチ上げるとリバース。手前側へ1ノッチづつ倒すと、1速づつシフトアップしていく。タッチは曖昧で、注意力が求められる。
クラッチはレザー張りのコーン・タイプで、劣化を抑えるにはデリケートな左足の操作が欠かせない。繋がりは唐突で、不慣れなドライバーがMT車を運転する時のように、発進時に強い揺れを伴う。
画像 ベテランカー・ランの功績車 ダラック10/12HP スパイカー12/16HP 同時期のビアンキ 現行のスパイカーC8も 全54枚