英国王チャールズ3世 自動運転車の普及に向けた新法案制定を約束 「安全性」が課題に

公開 : 2023.11.09 06:25

・チャールズ3世は自動運転車に関する新しい法律の導入を議会で約束。
・自動運転の商業的発展を支える法的な枠組みづくり。
・国内からは歓迎の声、しかし「安全性の追求」を訴える指摘も。

自動運転の普及・発展に向けた法的枠組みを

英国王チャールズ3世は11月7日、即位後初の議会演説で自動運転車について触れ、普及に向けた新しい法律の導入を約束した。

この法案は自動運転車法案(Automated Vehicles Bill)と呼ばれる見込みで、自動運転技術の安全な導入と商業化に焦点を当て、自動運転車の大量導入に向けた後押しをするものだ。

議会で演説するチャールズ3世
議会で演説するチャールズ3世    BBC

チャールズ3世は新国会の幕開けを告げる演説で、「閣僚は、自動運転車のような新興産業の安全な商業的発展を支援するための新たな法的枠組みを導入する」と述べた。

現在、英国では完全な自動運転システムは合法化されていない。他国に遅れをとるのを防ぐため、議員グループは政府に対して自動運転車に関する包括的な法案を成立させるよう求めてきた。

自動運転車法案の鍵は「安全性」

英国の自動車関連団体の多くは、このニュースを歓迎しながらも、新法案では安全性を最重要課題とするよう訴えた。

AA(英国自動車協会)会長のエドモンド・キング氏:
「自動運転車の導入計画は、より効率的な移動の機会につながるが、英国の道路に導入される際には安全性が最優先されなければならない」

自動運転に対する国民の理解も求められるだろう。
自動運転に対する国民の理解も求められるだろう。    AUTOCAR

RAC(王立自動車クラブ)の政策責任者サイモン・ウィリアムズ氏:
「本当の意味でドライバーレスのクルマが道路を走るという概念は、一般のドライバーにとってはまだ少しSF的かもしれないが、この法案の必要性を疑う余地はない。技術は急速に進歩しており、英国が取り残されないようにすることが重要」

自動運転技術を開発するスタートアップ、ウェイヴ(Wayve)のディレクター、サラ・ゲイツ氏:
「自動運転業界全体にとって非常に重要なマイルストーンだ。新しい自動運転車法案は、自動運転車の安全な配備のための包括的な責任の枠組みを制定するもので、消費者に対する重要な保護も含まれる」

保険会社アクサのUK・アイルランド部門CEO、タラ・フォール氏:
「(この法案は)人命を救う大きな可能性を秘めている。保険会社にとっても、自動運転に対する責任の所在を明確にするものだ」

まずは道路を整備せよ

自動運転車の普及に先立ち、英国内の道路整備を急ぐよう求める声も上がっている。

RACのウィリアムズ氏は「自動運転技術の恩恵を真に享受するためには、道路の状態を一度整理する必要があります。多くの道路標識が色あせた状態で、ドライバーレス車がどうやって道路を安全に走行できるのか理解するのは難しい」と指摘する。

英国では近年、アスファルト舗装の道路の「ポットホール」が問題視されている。
英国では近年、アスファルト舗装の道路の「ポットホール」が問題視されている。

チャールズ3世もこうした意見を支持しており、「日常の移動を改善するための政府の計画は、AAメンバーの96%が提起した第一の問題、すなわちポットホールと道路状況への対処にもっと焦点を当てる必要がある」と説いた。

英国では、ポットホールと呼ばれる道路の穴やくぼみを原因とする事故・故障が多発し、大きな問題となっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ウィル・リメル

    Will Rimell

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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