こんなボルボは今までなかった EX30 ツインモーターへ試乗 容姿と走りは優秀でも・・惜しい不備
公開 : 2023.11.10 19:05 更新 : 2023.11.10 20:31
オフにしたくなる運転支援システム
停まっている状態で、メニュー構造は覚えられる。しかし、走行中の操作は難しい。リアシートへ同乗していたカメラマンも、その煩雑さに驚いていた。
多くのメーカーは、タッチモニターへ機能を集約することに対し、考えを改め始めている。フォルクスワーゲンは、ID.3やID.4のシステムに対する批判が多いことを認めた。ルノーは、エアコンにハードボタンを残すことを当然の決定だと表明した。
安全性や責任性を売りにする、ボルボが取るべきソリューションなのだろうか。シートベルトを真っ先に導入し、最高速度を180km/hへ制限し、ディーゼルエンジンからも早々に手を引いた。それでも、こんなインテリアを与えるとは・・。
EX30の後に、ジェネシスG70を試乗したのだが、駐車場で徐行しつつ、ミラーとエアコン、シートヒーター、オートワイパーなどを直感的に操作できた。画面へ気を取られ、危ない思いをすることなく。
もっとも、3時間ほど試乗し、インターフェイスへある程度の魅力も感じたことは事実。若いジャーナリストなら、筆者ほどの嫌悪感は示さないかもしれない。
もう1つの疑問が、欧州の安全規制、GSR2に対応した運転支援システム。ボルボの技術者は、その機能が目指すところを高く評価しつつ、実環境で充分機能するかはわからないとしている。実際のところ、誤作動が少なくない。
少なくとも、ジェネシスより機能は優れている。だが、渋滞中に周囲の様子をうかがうだけで、奇妙な警告音で注意を促される。思わず、筆者は機能をオフにしたくなった。
活発なドライブトレインを楽しめる
この2点を除けば、EX30は優秀だと思うだけに、非常に残念。ボルボで安全部門を率いるトーマス・ブロバーグ氏は、ユーザーインターフェイスは謙虚であるべきだと話すし、数10年に渡って評価できるデザインが生み出されて来たのだけれど。
さて、試乗車は20インチ・ホイールを履いていたが、乗り心地は悪くない。ツギハギの多い市街地では多少硬さが目立つものの、全般的にしなやか。後輪駆動版に19インチ・ホイールの組み合せでは、衝撃の吸収性が向上し一層良好だった。
ツインモーターが生む動力性能は、興奮を誘う勢い。姿勢制御は落ち着いており、パワーデリバリーも自然で、しっかり熟成された印象がある。
フロントの駆動用モーターは156psを発揮するが、基本的にはリアアクスルが主体。システム総合で428psを発揮する、活発な四輪駆動のドライブトレインを楽しめる。
車重の軽い後輪駆動版は、もっと面白い。コーナーでの調整しろは広く、身のこなしは機敏。最高出力は271psへ低くなるが、それでも0-100km/h加速を5.1秒でこなす。コンパクト・クロスオーバーとしては、望外に速い部類だろう。
かくして、ボルボEX30の評価は悩ましい。ドライビング体験の印象は過去にないほど好ましい。ボディやインテリアのデザインは美しい。ところが、人間工学的な部分が大きく足を引っ張っている。
こんなボルボは今までなかった、と聞けば、大抵は褒め言葉になる。だが、ユーザーインターフェイスに関しては、逆の意味で用いることになってしまう。
ボルボEX30 ツインモーター・パフォーマンス(欧州仕様)のスペック
英国価格:4万4495ポンド(約805万円)
全長:4233mm
全幅:1836mm
全高:1549mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:3.6秒
航続距離:445km
電費:6.9km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1943kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー: 64.0kWh
急速充電能力:−kW
最高出力:428ps
最大トルク:55.2kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)