もっと走りを磨き込めた アウディQ8 50TDI ライフ中期の小変更 シャシーはそのまま

公開 : 2023.11.20 19:05

速くても得られる達成感は高くない

一方で、5年という時間は短くない。当時は先進的な内容だったとしても、メカニズムへ手を加えなかったという事実が、プラスに働くとは考えにくい。アウディの強い自信の表れなのかもしれないが。

Q8の訴求力は保たれている。内燃エンジンを搭載するフラッグシップSUVとして、快適で上質な、全天候へ対応する秀でた能力を備えることは間違いない。

アウディQ8 50TDI クワトロ Sライン(欧州仕様)
アウディQ8 50TDI クワトロ Sライン(欧州仕様)

搭載するエンジンを問わず、Q8は不満なく速い。正確な操縦性で、迅速な地上移動を叶えてくれる。検討候補の上位に入っても、納得できる。

反面、それ以外のモデルに惹かれてしまう理由も残っている。V6ガソリン・ターボエンジンを希望するなら、基本的に同じユニットを搭載するカイエン・クーペの方が、英国では価格が安かったりする。

Q7より大きなホイールを履き、短いサスペンション・ストロークを持つQ8は、英国のように荒れたアスファルトで本来の能力を発揮しにくい。やや揺れが目立つ乗り心地を納得できるほど、ドライビング体験の充足感が高いわけでもない。

カーブが連続する道では、Q7よりライン取りしやすく、1ランク上のグリップ力を楽しめる。ニュートラルな旋回ではあるのだが、若干のぎこちなさも残る。

ステアリングホイールへ伝わる感触は薄く、フロントノーズは一拍おいて反応する印象。コーナリングスピードは速くても、得られる達成感が高いとまではいえないだろう。

走りを磨き競争力を引き上げられたはず

運転の楽しさにフォーカスを当てたいAUTOCARとしては、折角のアップデートの機会を、みすみす逃したように思えてしまう。今のアウディなら、走りで競争力を引き上げるべく、更に磨き込むことはできたと思う。

個性的な容姿など、Q8を欲しいと思う理由は理解できる。アウディらしいインパクトがあり、存在感も充分だ。

アウディQ8 50TDI クワトロ Sライン(欧州仕様)
アウディQ8 50TDI クワトロ Sライン(欧州仕様)

だが、このクラスの高級SUVをお考えなら、間もなくアップデートを受けるQ7の方が賢明かもしれない。思い切り運転を楽しめるモデルをお探しなら、ポルシェ・カイエンと、じっくり比べてみてはいかがだろう。

アウディQ8 50TDI クワトロ Sライン(欧州仕様)のスペック

英国価格:7万2729ポンド(約1316万円)
全長:4986mm
全幅:1995mm
全高:1705mm
最高速度:241km/h
0-100km/h加速:6.1秒
燃費:9.3-10.4km/L
CO2排出量:201-232g/km
車両重量:2160kg
パワートレイン:V型6気筒2967cc ターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:286ps/3500-4000rpm
最大トルク:61.1kg-m/1750-3250rpm
ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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