欧州議会、排ガス規制「ユーロ7」緩和へ 妥協案の内容は? 新たな義務付けも
公開 : 2023.11.10 18:05
・欧州の次期排ガス規制ユーロ7が一部緩和される方針。
・厳しすぎた原案、新たな「妥協案」の内容とは?
・タイヤとブレーキの粒子状物質について試験と規制を検討。
排ガス規制、一部緩和の理由とは?
欧州議会は11月9日、次期排ガス規制「ユーロ7」の改正案を支持し、規制内容を緩和する方針を示した。欧州で自動車を販売するメーカーにとっては大きな意味を持つ。
新バージョンのユーロ7は、乗用車に現行のユーロ6と同等の排ガス規制を課すもので、大幅に厳しい目標値を課したり、新しいドライブトレイン技術の搭載を義務付けたりするものではない。
しかし欧州議会は、バスや大型輸送車といった商用車には依然として厳しい排出量制限を設けるべきとしており、また国際基準に沿ってブレーキとタイヤの粒子状物質の排出量試験および制限を実施すべきと主張した。
ユーロ7改正案に対する賛成は329票、反対は230票、棄権は41票だった。
チェコの欧州議会議員アレクサンドル・ボンドラ氏は投票について、欧州の炭素削減目標と自動車産業の支援との妥協に成功したと評価した。「我々は、環境目標とメーカーの重要な利益とのバランスをうまくとることができた。欧州の産業と市民の両方に害を及ぼす環境政策を実施するのは非生産的だ。我々は妥協を通じて、すべての関係者の利益に貢献し、極端な立場を避けることができる」
しかし、ACEA(欧州自動車工業会)は、新しいユーロ7の枠組みは「依然として重い代償を伴うものであり、業界の変革において非常に重要な局面にある」と警鐘を鳴らす。
ACEAのシグリッド・デ・フリース事務局長は次のように述べている。
「ユーロ7は自動車メーカーにとって、脱炭素化への膨大な努力に加え、多大な投資を意味することに変わりはない。また、エネルギー価格の高騰、サプライチェーンの不足、インフレ圧力、消費者需要の低迷など、地政学的・経済的に非常に厳しい状況の中でユーロ7は導入される。欧州は、環境問題と産業競争力のバランスをとったユーロ7を必要としている」
また、現行のユーロ6規制を遵守するために業界全体で「膨大な資源を投入」しており、その結果、「今日、排出ガスがほとんど測定できなくなっている」と強調した。
ACEAは、タイヤとブレーキから発生する粒子状物質について、EV(電気自動車)とも関連性があることから排出量試験の実施に賛同しているが、現在の試験方法は「まったく新しく、未試行」であり、課せられた目標が実現可能かどうか不確実であると指摘した。
ユーロ7は、EU(欧州連合)内で販売される新車に対する公害規制として計画されていた。規制の詳細についてはこれまでほとんど公表されていなかったが、多くの自動車メーカーが、規制に対応できるかどうかだけでなく、2025年7月という導入目標時期についても深い懸念を表明していた。
また、EUは2035年にエンジン車の新車販売を事実上禁止する予定だが、それよりもずっと前に、ユーロ7によって小型で安価な自動車が消滅してしまうだろうと予測する関係者も少なくなかった。自動車メーカーが電動化に何十億ドルも投資している中で、エンジン開発に莫大な財務的負担をかけるのは行き過ぎだという主張もあった。
こうした産業界の意見が各国政府によって支持されたため、2022年11月から2023年9月にかけて、ユーロ7の原案に関する「作業部会」協議が開催された。最終的に、複数のEU加盟国が原案に反対し、撤回に至った。EUが最近発表した「妥協案」では次のように示されている。
「いくつかの代表団は、試験条件と一部の排出量規制値をより厳しく規制しようとする提案に留保を表明した。代表団らは、提案された規定から生じる投資コストと環境便益の関係が不均衡になるとの見解を示した」
「これらの懸念に対応するため、EU議長国の妥協案では、試験条件を削除し、ユーロ6eで規定されているWLTP(乗用車等の国際調和燃費・排ガス試験法)とRDE(実走行での排ガス試験)に戻すこととした」
この妥協案は、法律として成立するまでEUのさまざまな機構を通過しなければならないため、今後も変更があるかもしれない。施行されるのは法律が成立してから1年後で、早ければ2026年ということになる。
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