欧州議会、排ガス規制「ユーロ7」緩和へ 妥協案の内容は? 新たな義務付けも
公開 : 2023.11.10 18:05
メーカーを悩ませた原案の内容とは?
妥協案で削除された原案の1つに、30分以内または約10km以内の短距離移動において「排出バジェット」を設定するというものがあった。
窒素酸化物、一酸化炭素、非メタン有機ガス、メタンといった汚染物質の許容レベルは、現在のRDEで要求されるレベルよりも低かったはずである。これを実現するのは容易ではなく、大きなコストがかかると考えられていた。
原案ではまた、「(走行時)最初の2kmの平均最大駆動力を20%に制限すべき」という提案もある。
これらの提案はいずれも、公害防止装置が作動温度に達するまでに時間がかかるという事実を踏まえたものである。そのため、自動車メーカーやサプライヤーは、電気的に予熱する触媒の開発に取り組んでいた。この触媒を使えば、発進が少々遅れる可能性はあるものの、30秒以内に作動温度に到達させることができる。
2025年7月までに当初のユーロ7に適合するような技術を実用化させることは、明らかに困難であっただろう。一例を挙げると、既存車両の多くは、より大きな触媒や、予熱に必要な電子部品を搭載することができない。
新しいユーロ7はどのようなものになる?
1. おそらく最も重大な変化は、車両のデータ記録機能と、車両から規制当局にデータを送信する機能が求められることである。現在使われている車載診断システムは、「車載監視システムを通じて継続的に排ガス挙動を監視・制御する」ために転用される。
新しい車載監視システムでは、排ガスに関する情報を車外に送信することも可能になる。「排ガスが著しく超過している場合、交通安全上の問題を回避するため、車両の走行を妨げることなく、2000km以内のタイムリーな修理を誘導する」という。
また、EVの充電は、送電網への負荷を軽減したり、再生可能エネルギーの割合が高い時に充電したりできるよう制御される計画もある。
2. タイヤとブレーキから排出される汚染物質は、新たな規制の対象となり、詳細は2024年末までに発表される予定である。2035年まで、ブレーキから排出される粒子状物質(PM10)の規制値は車両1台あたり7mg/kmとなる。
3. 駆動用バッテリーを搭載する電動車には、航続距離モニターまたはエネルギーモニターが取り付けられる。BEVとPHEVの最低性能要件は、製造後5年または走行距離10万kmで80%、製造後8年または走行距離16万kmで70%とする。
4. 車両、エンジン、排ガスシステムの “主寿命” は8 年16万km、”追加寿命” として10 年20万kmが期待される。
5. 公害防止システムや走行距離計の改ざんを防止するための新たな規制が導入される。
6. 燃料と電力の消費データを保存し、エネルギー効率を正しく判断する新しい装置が車両に装備される。
7. 2035年以降、CO2を排出しない合成燃料を使用するエンジン車の型式認定を認める。そのような燃料がEUによって合法化されればの話だが。
8. 車両の環境影響データをすべて記載したデジタル環境パスポートが、すべてのモデルに義務付けられる。
9. 新しい車両カテゴリーもいくつか導入される。ガソリン、ディーゼル、水素を動力源とするエンジンのみを搭載した車両を意味する「ICEV」、バッテリーのみを動力源とする車両を意味する「PEV」、外部電源から充電可能なエンジンと電気自動車のハイブリッド車両を意味する「OVC-HEV」などがある。
10. ユーロ7gと呼ばれる新しいサブカテゴリーが設けられる。これは、ジオフェンシングを利用して、都市中心部などの特定のエリアで動力源を電力に切り替えることができるPHEVに適用される。ただし、これらの車両には「駆動用バッテリーが空になりそうになったらユーザーに知らせ、最初の警告から5km以内に充電がなければ車両を停止させる」というドライバー警告システムを装備しなければならない。
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