出番は来ない方が良い ランドローバー SASローバー ミネルバ・ブラインド 特殊部隊のシリーズ1(2)
公開 : 2023.11.26 17:46
欧州の特殊部隊へ作られたランドローバーとミネルバ シリーズ1をベースに大量の火器で武装 特殊部隊の任務で活躍 英国編集部が2台を比較
もくじ
ーコンゴの戦闘で失われたミネルバ・シリーズ1
ーローバーの4気筒らしいボロボロというノイズ
ー非常に高い走破性に驚かされる
ー場所を問わず優れた能力を発揮したはず
ーランドローバー・シリーズ1がベースの2台のスペック
コンゴの戦闘で失われたミネルバ・シリーズ1
今回ご登場願ったミネルバ・シリーズ1 4×4ブラインド・パラシュート偵察車は、シャシー番号36633928。1952年に通常のミネルバ・シリーズ1として、ベルギー・アントワープの工場で完成している。
3年後にパラシュート連隊で使用するため、4×4ブラインド仕様として改造された。記録によって異なるが、合計で30台から60台が作られたようだ。
ベルギー空挺部隊に属した経験を持つ人物によって、2010年にレストアされている。バズーカやマシンガンはレプリカだが、ドライバー直後の無線機は当時のものだという。
通常のボディでもスチール製で車重は増えていたが、防弾のフロントガラスやラジエターなどで装甲性能が高められ、相当な武器も搭載されていた。2.0L直列4気筒エンジンには、かなりの重荷だっただろう。
資料では、7859台ぶんのノックダウン・キットがベルギーへ届けられており、その中には、今回のランドローバー・シリーズ1 4x4 ゼネラルサービスSASローバー Mk3と同じ、86インチ・シャシーの車両も含まれていた。
ところがミネルバは、契約違反を巡ってランドローバーと対立。最終的にミネルバ側が勝訴するものの、1956年にコンポーネントの供給は打ち切られ、同社は廃業に至った。
完成した4×4ブラインドの大多数は、ベルギー領だったコンゴの戦闘で破壊されるか放棄された。裁判後には、C20という独自モデルも販売されている。だが、ランドローバー・シリーズ1とかなり似ていた。
ローバーの4気筒らしいボロボロというノイズ
2023年にSASローバー Mk3と4×4ブラインドを乗り比べても、DNAの近さが良くわかる。ドアのない非常にシンプルなボディに、致命傷を与える武器が満載されている。フロントに装備されたフラットな装甲板が、ミネルバをシリアスに見せる。
シートは布張り。左側の運転席へ腰掛けると、肉厚なシールドがスカットルから立ち上がっている。その上に、防弾ガラスで作られた半円形のフロントガラスが載る。助手席側は可倒式で、機関銃を前方に向けて発砲できる。
ダッシュボードのメーターは、スピードと燃料、バッテリーの充電量。4速マニュアルとトランスファーのレバーが、中央から突き出ている。
金属製のスターターボタンを押すと、ローバーの直列4気筒らしい、ボロボロというエンジン音が聞こえ始める。クラッチペダルは不自然に軽く、ストロークは短い。シフトレバーは長く、正しいゲートを選ぶには、慣れと正確な操作が求められる。
一般道で4×4ブラインドを運転すると、コメディ映画に紛れたよう。周囲のドライバーは、レプリカの機関銃に驚きを隠さない。しかも操縦性は曖昧で、狙った方向へ走らせるには、ステアリングホイールを左右へ切り続ける必要がある。
これは、SASローバー Mk3でも共通する。43 BR 70という英国陸軍のナンバーで登録された今回のプロトタイプは、1955年11月14日にロンドン西部のフェルサム第21基地車両として納入され、秘密の任務をこなした。
画像 特殊部隊のシリーズ1 ランドローバー SASローバー ミネルバ・ブラインド 初代ジープと新型ディフェンダーも 全121枚