出番は来ない方が良い ランドローバー SASローバー ミネルバ・ブラインド 特殊部隊のシリーズ1(2)

公開 : 2023.11.26 17:46

非常に高い走破性に驚かされる

1967年12月13日に退役。グレートブリテン島中部のノッティンガムシャー州ラディントンにある保管所へ送られ、2013年に英国人コレクターが購入している。

2年間の丁寧なレストアを経て、復活を果たした。4×4ブラインドより年式は新しく、ダッシュボードのレイアウトが僅かに異なる。メーターは、速度計と、アンペアと燃料計が一体の2枚だ。とはいえ、それ以外は共通する。

ミネルバ・シリーズ1 4x4ブラインド・パラシュート偵察車(1952〜1953年/欧州仕様)
ミネルバ・シリーズ1 4×4ブラインド・パラシュート偵察車(1952〜1953年/欧州仕様)

フロントガラスはなく、ドライバーの上半身は露出し、50km/hで走ることすら勇気がいる。ステアリングホイールは、挑戦的なほど曖昧だ。

乗り心地は、車重の重い4×4ブラインドの方が有利に思えるが、SASローバー Mk3の方がホイールベースは長く明確な違いはない。少なくとも、どちらもオンロードでは驚くほどしなやか。

全体的な印象としては、SASローバーの方が洗練度が高い。エンジンノイズは小さく、ボディ剛性も勝っている。

石灰質のオフロードへ挑むと、極めて高い走破性に驚かされる。ミネルバは、ランドローバーが備える能力もしっかり複製している。

黄色いレバーを押し下げて四輪駆動へ切り替え、赤いレバーを引いてローレンジに入れる。細かい砂の浮いた滑りやすい急斜面を難なく登り、下り坂でも安定している。

あやふやなステアリングも、不整地では安心感が高い。ただしセルフセンタリング性は低く、素早く切り戻す必要がある。最大トルクは13.9kg-mと細いものの、キビキビと軽くないボディを先へ進める。

場所を問わず優れた能力を発揮したはず

この2台が現地でどんな戦いへ挑んできたのか、今では想像するしかない。運用履歴は、機密にされている。非力でも機敏に走るから、場所を問わず優れた能力を発揮したことだろう。

少なくとも、不足ない火器を装備し、特殊部隊の頼もしい相棒になったのではないかと思う。こんなクルマの出番は、来ない方が望ましいとしても。

手前からミネルバ・シリーズ1 4x4ブラインド・パラシュート偵察車と、ランドローバー・シリーズ1 4x4 ゼネラルサービス SASローバー Mk3
手前からミネルバ・シリーズ1 4×4ブラインド・パラシュート偵察車と、ランドローバー・シリーズ1 4x4 ゼネラルサービス SASローバー Mk3

協力:グッドウッド、マーク・ゴールド氏、ジョナサン・ギル氏、ジョン・マストランジェロ氏、 ジュリアン・ショールハイファー氏

ランドローバー・シリーズ1がベースの2台のスペック

ランドローバー・シリーズ1 4x4 ゼネラルサービス SASローバー Mk3(1954〜1957年/英国仕様)

英国価格:−ポンド(新車時)/10万ポンド(約1810万円)以下(現在)
生産数:10台
全長:3570mm
全幅:1550mm
全高:−mm
最高速度:−km/h
0-64km/h加速:24.4秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:2134kg
パワートレイン:直列4気筒1997cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:52ps/4000rpm
最大トルク:13.9kg-m/1500rpm
トランスミッション:4速マニュアル(四輪駆動)

ミネルバ・シリーズ1 4×4ブラインド・パラシュート偵察車(1952〜1953年/欧州仕様)

英国価格:−ポンド(新車時)/3万ポンド(約543万円)以下(現在)
生産数:30〜60台(予想)
全長:3350mm
全幅:1550mm
全高:−mm
最高速度:−km/h
0-64km/h加速:−秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:2284kg
パワートレイン:直列4気筒1997cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:52ps/4000rpm
最大トルク:13.9kg-m/1500rpm
トランスミッション:4速マニュアル(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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