”この3台の中でもっともドライバーの力量によって左右されるクルマである。宝石をプレゼントされた女性が、注意深くラッピングを解くように運転すれば本領を引き出すことができる。いわば成熟したスポーツカーなのだ” とマット・ソーンダースは言う。マット・プライアーは ”あいも変わらずナンバーワン” と纏めた。

そしてマクラーレン。バンピーなカッスル・クームを手際よく走り抜けられたのはこのクルマだったのだが、例えば縁石にタイヤを引っ掛けながらハードブレーキングを行った際にはお世辞にも他の2台と同じくらいに優れてるとは言いがたい。

ストレートでは3台の中で紛れもなく最速ではあるのだけれど、純粋に運転が好きな者の心を揺さぶるものではない。コースを走り終えたジャッジマンたちは、スピードと安定感について感動してはいるようだが、GT3や458に乗ったあとのように、楽しさのあまり笑いが止まらないという者はほとんどいなかった。

また650Sの場合、GT3や458では粘ることができる場所でもアンダーステアが顔を出しやすい。例えばクォリイ・コーナーの出口からからタワーに向かう時など、650Sのフロントエンドは驚くほど足元を掬われやすく、できることと言ったら我慢強く耐えることくらいしかない。さらにアクセルの踏力を強めればアンダーステアは強くなるか、ガラリとオーバーステアに転じるため、コーナーでは大きくタイムをロスすることになった。

周回を重ねるごとにブレーキ・ペダルのフィールが変わることも何人かのテスターが指摘していたが、公平な観点でみれば、多くのテスターはマクラーレンの、卓越したマナーを評価していた。

フランケルは ”バンプを踏み越える際の処理はもはや他と別格。3年前にロッキンガムでドライブしたモデルの後継車種とは考えられない” と感想を述べた。”12Cに乗って、物足りなく感じた部分がこの650Sにはすべて揃っている。短期間でこれだけのことをやれるマクラーレンはやはり末恐ろしいメーカーだ” とティショーも高く評価した。

現時点ではフェラーリやポルシェに一歩及ばないが、いつか必ず勝者の座を手にする日がくるだろう。