戦前クラシック唯一の魅力 V4エンジンにモノコック ランチア・アプリリア 英国版中古車ガイド(2)
公開 : 2023.12.02 17:46
購入時に気をつけたいポイント
ボディとシャシー
大きな開口部を支えるサイドシルは、重要な構造体になっている。酷いサビや修復痕がないか、丁寧に観察したい。ボディの変形にも注意したい。ドアは綺麗に閉まるのが通常。インテリア用もだが、クロームトリムはほぼ入手困難だ。
ボックスセクション・シャシーはエンジンの両側へ伸びており、前後のサスペンションとジャッキポイントが固定されている。これも錆びやすい。
プラットフォーム・シャシーの場合、ハニカム構造部分が錆びる可能性はあるものの、部分的に修復可能。フロアパネルは、ランチア・モーター・クラブから入手できる。
二重構造になったトランクリッドと、荷室フロアや周辺のパネルの状態を確かめる。ラジエターの下にあるフロント・バランスパネルも、二重構造で錆びがち。
エンジン
ランチアが狭角V型4気筒エンジンを開発した理由は、小さなサイズにあった。キャブレターはゼニスが標準だが、ウェーバーへ交換されている場合も多い。基本的にエンジンは堅牢だ。
エンジンルーム内の配置などは、モデルによって異なる。今回の車両では、バルクヘッド側にリアダンパー・コントロールとブレーキ・フルードのリザーバータンクがある。
トランスミッションとブレーキ
4速マニュアルに、変速時のギアの回転数を調整するシンクロメッシュは備わらない。摩耗すると、ストレートカットの1速が抜けやすくなる。クラッチからの異音は、フルード漏れが疑われる。
ブレーキは、長期間乗らないでいると固着してしまう。インボード構造で、メンテナンスのアクセス性は良くない。
サスペンションとホイール
少々複雑な独立懸架式リア・サスペンションは、当時最先端の技術だった。
初期の穴の空いていないホイールは、入手不可能と考えたい。リムが錆びやすい。現存するアプリリアの殆どは、後期型の穴開きホイールを履いている。
インテリアと電気系統
ダッシュボードの、メーター類やスイッチ類は入手困難。すべて正常に動くか確かめたい。電気系統の配線は、劣化していて不思議ではない。
内装に用いられていたクロスは、近年になってオリジナルの配色で入手できる体制が整えられた。英国で販売された初期のアプリリアは、多くがレザー内装だった。
ランチア・アプリリアのまとめ
技術的な特徴や小さなボディサイズ、快適性、動力性能、実用性など、アプリリアには戦前のクラシックとして唯一無二の魅力がある。現代の交通にも問題なく適応でき、リラックスして運転できる。その能力には、驚くことだろう。
新車当時、先進的なアプリリアは非常に高額だった。だが近年は、クラシックカーとしてはそこまで価値が上昇していない。可能な限り良好な例を探し、往年のランチアを嗜んでみてはいかがだろう。
良いトコロ
ランチアの高い技術力が、細部にまで滲み出ている。普段の整備だけでも、楽しく感じられるはず。殆どの消耗部品は入手が可能。イタリアの専門家など、バックアップ体制も整っている。
良くないトコロ
戦前のモデルなため、一部の部品は非常に高価だったり入手できないものもある。
ランチア・アプリリア(1936〜1949年/欧州仕様)のスペック
英国価格:350ポンド(1938年時)
生産数:2万64台(ベルリーナ)/7553台(プラットフォーム・シャシー)
全長:3962-4153mm
全幅:1473mm
全高:1460mm
最高速度:128km/h
0-97km/h加速:12.6秒
燃費:9.9-11.3km/L
CO2排出量:−
車両重量:880-950kg
パワートレイン:V型4気筒1352・1486cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:47ps/4000rpm-48ps/4300rpm
最大トルク:7.8kg-m/2000rpm-10.2kg-m/2500rpm
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)