スーパーカーとグランドツアラーを両立 メルセデスAMG GT 63へ試乗 上質で大人なクーペへ

公開 : 2023.11.18 19:05

新型SLと同じインテリア 大人なクーペへ

インテリアは、基本的にSLと同じ。ダッシュボード中央には、11.9インチのタッチモニターが鎮座。MBUXと名付けられたインフォテインメント・システムは、素早く滑らかに動作する。音声制御システムも優秀だ。

各所にレザーが充てがわれ、高級感を生んでいる。だが、場所によってはチープなプラスティック製部品も散見される。

メルセデスAMG GT 63(欧州仕様)
メルセデスAMG GT 63(欧州仕様)

頭上空間には余裕がある。リアシートは子供向けながら、この手のモデルとしては妥当だろう。背もたれを倒せば、荷室容量を321Lから675Lへ広げられる。

観察はこのくらいにして、運転してみよう。ステアリングホイールを握って5kmも走らない内に、GTの個性が変化したと気づける。

市街地では、V8エンジンはマイルドで、9速ATはスムーズ。アクセルレスポンスは従来よりリニアさを増し、パワーを調整しやすい。渋滞時も遥かに扱いやすくなった。

高性能なアクティブ・サスペンションによって、低速域でも乗り心地はしっとり。洗練され、大人なクーペへ変わったように感じる。

開けた道へ足を伸ばせば、動的能力に疑問の余地はない。ひと回り大きく重くなっても、GTは極めて有能。興奮のドライビング体験へ浸れる。改良を受けた4.0L V8ツインターボエンジンは、見事なレスポンスで回る。

ツインスクロールの2基のターボが本気で仕事をし出すのは、2500rpm以上から。圧倒されるトルクが中回転域からみなぎり、目眩しそうな加速が始まる。7000rpmのレッドラインまで勢いは上昇し、主張も増大していく。

内燃エンジンの音響的喜び 一体感と達成感

スポーティなドライブモードを選ぶと、エグゾーストから重厚な響きも放たれる。アクセルオフでのオーバラン時は、ドロドロ・バリバリとドラマチック。内燃エンジンの音響的喜びも堪能できる。

9速ATも優秀。マニュアル・モードへ切り替えると、従来のデュアルクラッチAT並みに鋭い変速を決めてくれる。先代から2段増えたことで、巡航時の平穏さにも貢献している。130km/hで走っていても、9速なら1800rpmで足りてしまう。

メルセデスAMG GT 63(欧州仕様)
メルセデスAMG GT 63(欧州仕様)

初代より流暢で落ち着きを増した、動的特性のバランスも秀抜。シャシーのハード面はSLと共通部分が多いものの、ホイールのオフセットやキャンバー角、サスペンションのレートなどが異なり、より強い一体感と達成感を生んでいる。

まずはステアリング。新開発の電気機械式ラックはフィードバックが増え、手のひらへ信頼できる感触を伝える。重量配分がフロント寄りになったことに加え、後輪操舵システムの絶妙な制御により、リアの反応も機敏だ。

四輪駆動システムが緻密にトルクを制御し、期待以上のグリップとトラクションを発揮。コーナーの入口から出口まで、安定性も飛躍的に向上している。路面をしっかり掴み、ドライバーへ大きな自信を与える。

アクティブ・ダンパーとアンチロール・システムが組まれたサスペンションは、従来を遥かに超える衝撃吸収性を叶えている。フラットな姿勢制御にも唸らされる。先代の弱点といえた、コーナリング中の凹凸の処理も改善。意欲的に頂点を狙える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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