フェラーリ史上最高額 78億円超で落札されたフェラーリとは?

公開 : 2023.11.15 13:48  更新 : 2023.11.15 13:57

フェラーリ 250GTOが5年ぶりにオークションに登場しました。ワークスレーサーという出自を持つ稀少な個体はなんとフェラーリ史上最高額の78億円超で落札されました。そんな250GTOの持つヒストリーは…

フェラーリ 250GTOが5年ぶりにオークション登場

2018年以来オークションに姿を見せなかったフェラーリ 250GTOが、RMサザビーズの「The One − 1962 Ferrari GTO」オークションに登場。約78億4365万円というフェラーリの過去最高額で落札された。

250GTOはフェラーリのクラシックモデルの中で頂点に位置するモデルだ。当時の世界スポーツカー選手権(現在のWECに相当)のGTクラス制覇のために、1962年に250GT SWBのエボリューションモデルとして誕生する。実戦に投入された250GTOは1962年のル・マン24時間では総合2位、GTクラス優勝を筆頭にGTカテゴリーを席巻し、同年の国際GT選手権のチャンピオンに輝く。その勢いは衰えることなく、1963年、1964年と3連覇する快挙を成し遂げる。

フェラーリ 330LM/250GTO
フェラーリ 330LM/250GTO    Jeremy Cliff /RMサザビーズ

このように素晴らしいレーシング・ヒストリーを持つ250GTOは、現役を引退するとすぐさまコレクターズアイテムとなる。250GTOの製作台数は僅か33台。1964年に送り出された250GTO/64を含めても36台に過ぎないだけに、いつの時代も憧れの存在であり続けている。250GTOの後継モデルとなる250LMは、よりレーシングマシン寄りとなり公道で乗るのは厳しかった。一方の250GTOは街乗りもこなせるフレキシビリティを持つだけに、ラリーからサーキットまで楽しめることも評価を上げた要因といえる。

シャシーナンバー3765LM

今回出品された250GTOは3765LMのシャシーナンバーを備える個体。厳密にいうと250GTOの姿をした330LMBで、シャシーナンバー末尾のLMがその出自を示す。330(1気筒あたりの排気量)が示すように4リッターエンジンを搭載する1962年モデルで唯一のワークスカーである。当時3リッターの250GTOの最高出力が300ps前後だったのに対し、4リッターに拡大された330LMは385psを発揮し、最高速度は280km/hに達したという。

3765LMは1962年5月に開かれたニュルブルクリンク1000kmがデビュー戦となり、ウイリー・メレスとマーク・パークスが駆り、総合2位、クラス優勝を果たした。6月のル・マン24時間もワークスドライバーのマイク・パークスとロレンツォ・バンディーニに託され、予選で2位を獲得する。決勝はコースアウトに起因するオーバーヒートに見舞われ56周で闘いを終えてしまった。

フェラーリ 330LM/250GTO
フェラーリ 330LM/250GTO    Jeremy Cliff /RMサザビーズ

ル・マン後に3765LMはスクーデリア・フェラーリから放出されるが、1963年にマラネッロに戻され250Pのエンジン(EN:0796)に積み替えられ、5速トランスミッションも組み込まれた。なお、オリジナルのエンジン(EN:3765)も残されている。その後シチリアに渡る。1965年になるとフェルディナンド・ラッテリが譲り受け、シチリアのレースで数多くの勝利を記録した。

1967年に渡米し、1974年にアメリカン・モーターズ社(AMC)のエンジン・デザイン・チームのマネージャーで、レイドルフ氏はFCAの会長を務めるフレッド・レイドルフ氏が入手する。1985年にレイドルフ氏は、3765LMを熱心なコレクターである現オーナーのジェームス・イエガー氏に売却する。彼はフロリダのシェルトン・フェラーリでフルレストアが行われた。

完成した3765LMは、1990年6月に開かれたFCAナショナル・コンクール・デレガンスでクラス優勝を飾ったのを皮切りに、主要なイベントで数多くの賞を獲得している。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 編集

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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