ガヤルドにアヴェンタドール、ウルス ランボルギーニを牽引した男:マウリツィオ・レッジャーニ(2)
公開 : 2023.11.25 09:46
LDVIを実装したウラカン SUVのウルス
2014年にガヤルドの後を継いだウラカンは、プラットフォームやドライブトレインなどを、2世代目アウディR8と共有。新たな挑戦といえたが、ランボルギーニに望ましい動力性能を提供する限りファンは気に留めないと、レッジャーニは確信を持っていた。
だが、当初のウラカンはドライバーとの一体感が乏しかった。それを受け、先進的なLDVI (ランボルギーニ・ディナミカ・ヴィーコロ・インテグラータ)という電子制御システムの実装など、大幅なアップデートが繰り返し行われた。
「初期のウラカンは、プッシュしてドリフトへ持ち込んでも、シャシーが積極的に修正する傾向がありました。ですがLDVIの採用で、計算能力が向上。介入が大幅に高速化しています」
「ドライバーは、ソフトウェアの介入へ気づくべきではありません。ドライバーをとがめるものではなく、助けてくれるものであるべきです」。レッジャーニが説明する。
そして、彼が最後に仕上げたのがランボルギーニ・ウルス。他の高性能ブランドの動向と同じく、ランボルギーニがSUVを開発するという決断は、物議を醸した。しかし、市場の支持は間違いなく高いものだった。
ウルスは、ポルシェ・カイエンやベントレー・ベンテイガ、アウディQ7、Q8と同じプラットフォームを採用。技術的には密接な関係にあるが、ランボルギーニらしい特長を与えるため、多くの努力が投じられている。
単純な足し算的アプローチは利用できない
「同じ部分へ注目が向きがちですが、重要なのはどこが違うのか、という点です。最大の課題だった1つが、DNAへ必要な変更を加えるため、プラットフォームの設計変更を認めてもらうことでした」
「着座位置を下げるだけでも、簡単ではありませんでした。カーボンセラミック・ブレーキが必要だと伝えると、またひと悶着。他ブランドは、必要としていませんでしたから」
「最高速度を295km/hへ落とし、不要にはできないのか、と確認されたのを覚えています。305km/hが必要だと答えましたよ!」
レッジャーニは、最新モデルのレヴエルトの開発初期へ関わった後、2022年にランボルギーニのモータースポーツ部門へ異動。その責任者を務めた。つまり、ル・マン・ハイパーカー、LMDhの開発指揮を執ることを意味した。
しかし完成を見ずして、2023年末に彼は引退する。華やかなキャリアへ区切りをつけ、余生を楽しむ時間が始まる。
数多くの高性能モデルへ関わった彼だが、哲学の中心は工学的な考えにある。「一般的に自動車産業は、スカラー的な全体量の特性が働きます。何かを加えることで、より良いものが生まれる。1+1+1は3になるんです」
「しかし、わたしがいつもお話しているのは、スーパースポーツカーの場合はベクトル的な結果になること。正しい向きでなければ、成果が2になることもあれば、1やマイナスになることもあります」
「その問いは、体験が向上するかどうか。単純な足し算的アプローチは、利用できないのです」
画像 ランボルギーニを牽引した男:マウリツィオ・レッジャーニ氏 キャリアで関わったモデル群 最新レヴエルトも 全211枚