公道を走れる「XX」 フェラーリSF90 XX ストラダーレへ試乗 それでも改善の余地アリ

公開 : 2023.11.16 19:05

プラグインHVのハイパーカーの可能性を追求したSF90 XX 250km/hで540kgのダウンフォース 訴求力ある操縦性や落ち着き、調整域を獲得 英国編集部が評価

従来のアイデアをオマージュしたSF90 XX

サーキット専用のスペシャルモデル、ラ・フェラーリがベースのFXX-Kをフェラーリがリリースしてから約10年が経つ。エンツォ・フェラーリをベースとしたFXXや、599 GTBがベースの599 XXなども、過去には提供されてきた。

更に手を加えたエボ仕様も存在したが、特別な顧客へ向けてマラネロが販売したXXシリーズは、合計100台に満たない。同時に近年は、イコナ・シリーズと呼ばれるショーカーに近い少量生産モデルが、富裕層を惹きつけている。

フェラーリSF90 XX ストラダーレ(欧州仕様)
フェラーリSF90 XX ストラダーレ(欧州仕様)

今回試乗したSF90 XXは、そのイコナ・シリーズとは別の系統といえ、最近の流れにはそぐわないように思える。一方で「XX」を名乗っていても、従来とは違ってもいる。

特別なボディが与えられ、メカニズムの改良が施されている。ところが、サーキットで開かれる、大富豪を集めた限定走行会に加わることはできないそうだ。フェラーリSF90 XX ストラダーレの予定生産数は1400台。開催したら、コースは渋滞してしまう。

フェラーリは、XXに対する考えを改めたのだろう。同社の関係者も、従来のアイデアをオマージュしたモデルだと説明する。そもそも、ナンバーを取得し公道を走れる。

AUTOCARの読者ならご存知かと思うが、従来のXXはサーキット以外の走行を想定せず、スリックタイヤを履き、ドライバーには多少の妥協が強いられた。しかし、SF90 XXはそこまでスパルタンではない。

サーキットに限定していたら、より軽量で特別なモデルに仕上がっただろうと、フェラーリは説明する。これまでの展開とは異なることも、認めている。

一層のポテンシャルを追求したSF90

シニア・プロダクトマネージャーのマテオ・トゥルコーニ氏へお話を伺う。「フェラーリがSF90 ストラダーレのようなモデルを作る時、遠慮は一切しません。特別なクルマのために、何かを残しておこうとは考えません」

「クルマのポテンシャルを最大限に引き出すことは、スーパーカー開発の基本。ですから、当初の計画にはXXは存在していませんでした。開発を継続するなかで、多くの部分で大幅に可能性を引き上げられると発見したんです」

フェラーリSF90 XX ストラダーレ(欧州仕様)
フェラーリSF90 XX ストラダーレ(欧州仕様)

快適性を損なうことなく、一層のポテンシャルが追求されている。SF90をより良く磨き込んだともいえるだろう。XXでもクーペとスパイダーが用意されるが、事実、数多くの変更が加えられている。

パワートレインから見ていくと、4.0L V8ツインターボ・エンジンとトリプル・モーターで構成されるプラグイン・ハイブリッドは、30psが上乗せされた。17psは新しいピストンと高圧縮化で得られ、残りは駆動用バッテリーの高出力化で叶えている。

ハイブリッド・システム全体も再設計されたといい、フロントのラジエターまわりも変更を受けた。エンジンルーム内のサウンド共振回路も見直され、内燃エンジンによる聴覚体験が強化された。

デュアルクラッチATもチューニングを受け、一層鋭い変速を実現。リアブレーキは大径化され、新しいアンチロック・ブレーキシステム「ABSエボ」を実装し、旋回時の安定性と操縦性を向上させたという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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