写真以上に美しいボディ ランボルギーニ350GT 完璧な処女作 理想のグランドツアラー(2)

公開 : 2023.12.09 17:46

ランボルギーニ初の量産モデルが、FRの350GT フェルッチオが理想としたグランドツアラー 処女作でありながら高水準の完成度 英国編集部が振り返る

V12エンジンで満たされるボンネット内

ランボルギーニ350GTのボディは、写真以上に美しい。スリムでプロポーションが良く、どこを見ても曲線で構成されている。直線と呼べるのは、リアのホイールアーチ上端くらいだろう。

シビエ社製のヘッドランプが横に長い楕円で、リアフェンダーの両側に給油リッドが付くのが、350GTの特徴といえる。ちなみに最初の9台は、リアシートが中央に設えられた、2+1のシートレイアウトだった。

ランボルギーニ350GT(1964〜1967年/欧州仕様)
ランボルギーニ350GT(1964〜1967年/欧州仕様)

他方、左右に別れるフロントバンパーと、フィアット社製のドアハンドル、4本出しのマフラーは400GTと共通する要素。ただし初期型には、左右に繋がったフロントバンパーが与えられていた。バックライトも装備されていなかった。

ボンネット内は、V型12気筒エンジンで満たされている。両サイドにウェーバー・キャブレターが3基づつ並ぶ。インテークの位置的に、プラグ交換はひと仕事になるだろう。吸気音は、大きなエアフィルターで殆ど聞こえない。

ZF社製のステアリングラックは、ヘッドライトの後ろへ狭そうに組まれる。場所を食う、サイドドラフト・キャブレターの配置が原因といえる。

ツイン・コイルとディストリビューターは、フロント側。ブレーキとクラッチ用の小さなリザーバータンクは、左のフェンダーへ寄せられている。バッテリーは、リアの荷室へ収まる。

長いドアを開く。量産車初だったと思われる、ヘッドレストが背もたれと一体になったシートへ座ろうとしたら、フロントガラスの下端へ膝をぶつけてしまった。

初の量産モデルへ注がれた細部へのこだわり

ガラスエリアは広く、繊細なルーフを支えるピラーが細い。運転席へ座ると、金魚鉢の中に入ったかのよう。殆ど死角のない、360度の視界が得られる。サイドガラスは大きくカーブし、パワーウインドウの動きは滑らかではないようだ。

フロントワイパーが1本のモデルも、350GT以前には存在しなかったように思う。後期型では、一般的な2本へ改められている。

ランボルギーニ350GT(1964〜1967年/欧州仕様)
ランボルギーニ350GT(1964〜1967年/欧州仕様)

内装は装飾的な要素が少ないものの、高品質。天井の内張りにもパッドが仕込まれ、各部がクロームメッキのトリムで飾られる。ランボルギーニ初の量産モデルへ注がれた、細部へのこだわりを感じる。

ダッシュボードは、パッドが内蔵された合成皮革で覆われる。ドライバーの正面には、7000rpmでレッドラインが切られた回転計と、300km/hまで振られた速度計の、大きなメーターが2枚。フォントは、1950年代風で好ましい。

油圧計は、ドライバーの視界へ入る中央。リビルド後5000kmしか走っていない今回の350GTは、中央値でずっと安定していた。右側には、油温と水温、充電、燃料の4枚のメーターが並ぶ。カラフルな警告灯が可愛い。

特に表記のないヒーター・スイッチは、明らかにランチア由来だろう。小さなグローブボックスには、文字通り薄手の手袋しか入らない。シートの背後には広い荷室がある。1960年代なら、幼児を寝かせて旅もできたことだろう。

タイトなカーブが迫ったら、助手席のパートナーはダッシュボードのグラブハンドルを握れる。1965年にスイスへ納入されたこの350GTには、シートベルトが備わらない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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