写真以上に美しいボディ ランボルギーニ350GT 完璧な処女作 理想のグランドツアラー(2)
公開 : 2023.12.09 17:46
低速域では粘り強く、中回転域ではたくましい
1971年には屋外へ放置されていたようだが、次のオーナーが再生させ、約40年間も所有していたという。その後、同じチューリッヒのコニ・ルツィンガーとファビアン・ルツィンガー親子が購入。膨大な費用をかけて、レストアを施した。
新車のようなシートに落ち着くと、上ヒンジのペダルがオフセットしていると気づく。だが、シフトダウン時にヒール&トウしやすいレイアウトなこともわかる。
運転姿勢は起き気味。サンバイザーは、万が一の場合は致命傷を与えそうな、アクリル樹脂製。顔へ迫るフロントピラーの細さも、最近ではありえない。
バッテリーのカットオフスイッチとイグニッションをオンにし、燃料ポンプの動作を確かめてアクセルペダルを3度踏む。スターターを回せば、V12エンジンが目覚める。穏やかな500rpmのアイドリングに落ち着くまで、数分待つ。
油圧計の針が動き出すまで、更に30分は必要らしい。そのまま公道へ出ると、エンジンは期待以上に扱いやすい。低速域では粘り強く、中回転域ではたくましい。
5速マニュアルは、低いギアではノイズが大きい。シフトレバーの動きは軽く正確。ストロークも短い。記憶の限り、後に開発されたランボルギーニ社製のユニットよりタッチは良いようだ。
公道の環境では、2速で殆どをまかなえる。130km/h近くまで加速もできる。3速は、郊外の穏やかな交通へ混ざるのに丁度いい。
ゆったり走らせるのが心地良い
最高速度は251km/hがうたわれるが、350GTはゆったり走らせるのが心地良い。視界は広く、安心して運転できる。操縦系の感触や反応に、不自然なところは一切ない。
スイスの舗装は綺麗に手入れされていたが、乗り心地は飛ばさなくても滑らか。高速域でしっとりさが増すわけでもない。マンホールなどを通過しても、ボディの揺れは最小限だ。
試乗前は、パワーステアリングが備わらないことが、弱みになるのではないかと予想していた。確かに、低速域では少し重く、レシオはスロー気味。だが、それは強みの1つだった。この年代のFRのグランドツアラーとしては突出して軽く回せ、反応は正確だ。
運転席の印象では、コーナーでのボディロールも小さめ。グリップには余裕があり、パワーをしっかり展開できる。ヘアピンカーブ以外は、ニュートラルな操縦性で挙動も予想しやすい。
クラッチが繋がるポイントはかなり手前だが、ペダルは適度な力で踏め、こちらも扱いやすい。アクセルペダルも重めながら、漸進的で全体と調和している。ギアを問わず、威勢よく加速する印象とも一致する。
キャブレターで息を吸うV12エンジンは、タービンのようにストレスフリーに回り、無限に引っ張れそうな気がしてくる。回転上昇とともに力強さも増すが、ノイズの変化は小さい。高速域では、風切り音などに紛れてしまう。