写真以上に美しいボディ ランボルギーニ350GT 完璧な処女作 理想のグランドツアラー(2)

公開 : 2023.12.09 17:46

低速域では粘り強く、中回転域ではたくましい

1971年には屋外へ放置されていたようだが、次のオーナーが再生させ、約40年間も所有していたという。その後、同じチューリッヒのコニ・ルツィンガーとファビアン・ルツィンガー親子が購入。膨大な費用をかけて、レストアを施した。

新車のようなシートに落ち着くと、上ヒンジのペダルがオフセットしていると気づく。だが、シフトダウン時にヒール&トウしやすいレイアウトなこともわかる。

ランボルギーニ350GT(1964〜1967年/欧州仕様)
ランボルギーニ350GT(1964〜1967年/欧州仕様)

運転姿勢は起き気味。サンバイザーは、万が一の場合は致命傷を与えそうな、アクリル樹脂製。顔へ迫るフロントピラーの細さも、最近ではありえない。

バッテリーのカットオフスイッチとイグニッションをオンにし、燃料ポンプの動作を確かめてアクセルペダルを3度踏む。スターターを回せば、V12エンジンが目覚める。穏やかな500rpmのアイドリングに落ち着くまで、数分待つ。

油圧計の針が動き出すまで、更に30分は必要らしい。そのまま公道へ出ると、エンジンは期待以上に扱いやすい。低速域では粘り強く、中回転域ではたくましい。

5速マニュアルは、低いギアではノイズが大きい。シフトレバーの動きは軽く正確。ストロークも短い。記憶の限り、後に開発されたランボルギーニ社製のユニットよりタッチは良いようだ。

公道の環境では、2速で殆どをまかなえる。130km/h近くまで加速もできる。3速は、郊外の穏やかな交通へ混ざるのに丁度いい。

ゆったり走らせるのが心地良い

最高速度は251km/hがうたわれるが、350GTはゆったり走らせるのが心地良い。視界は広く、安心して運転できる。操縦系の感触や反応に、不自然なところは一切ない。

スイスの舗装は綺麗に手入れされていたが、乗り心地は飛ばさなくても滑らか。高速域でしっとりさが増すわけでもない。マンホールなどを通過しても、ボディの揺れは最小限だ。

ランボルギーニ350GT(1964〜1967年/欧州仕様)
ランボルギーニ350GT(1964〜1967年/欧州仕様)

試乗前は、パワーステアリングが備わらないことが、弱みになるのではないかと予想していた。確かに、低速域では少し重く、レシオはスロー気味。だが、それは強みの1つだった。この年代のFRのグランドツアラーとしては突出して軽く回せ、反応は正確だ。

運転席の印象では、コーナーでのボディロールも小さめ。グリップには余裕があり、パワーをしっかり展開できる。ヘアピンカーブ以外は、ニュートラルな操縦性で挙動も予想しやすい。

クラッチが繋がるポイントはかなり手前だが、ペダルは適度な力で踏め、こちらも扱いやすい。アクセルペダルも重めながら、漸進的で全体と調和している。ギアを問わず、威勢よく加速する印象とも一致する。

キャブレターで息を吸うV12エンジンは、タービンのようにストレスフリーに回り、無限に引っ張れそうな気がしてくる。回転上昇とともに力強さも増すが、ノイズの変化は小さい。高速域では、風切り音などに紛れてしまう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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