この楽しさは「リアル」 世界初の電動ドライバーズカー ヒョンデ・アイオニック5 Nへ試乗

公開 : 2023.11.29 19:05

運転操作の指標になるギミックのエンジン音

駆動用モーターのトルク分配率も選べる。ドーナツターンの練習ができるドリフト・オプティマイザ・モードや、ドラッグレースに好適なローンチコントロールも備わる。

0-100km/h加速は3.4秒。公道でアイオニック5 Nの本領を引き出すことは難しい。とはいえ、基本的にドライブモードを少し引き上げるだけで充分楽しい。

ヒョンデ・アイオニック5 N(韓国仕様)
ヒョンデ・アイオニック5 N(韓国仕様)

手始めに、ギミックのエンジン音とシフトチェンジを有効にして、サーキットへコースイン。ヒョンデによると、少しバカバカしい機能だとは理解しつつ、8速ATの技術者がギミック開発にも関わったそうだ。

筆者のように内燃エンジンへ慣れた人間にとっては、聞こえてくる音が運転操作の1つのキッカケになる。ブレーキを掛け始めるポイントや、ターンイン時のスピードを判断するのに、実際役に立っていた。運転しているという雰囲気も高まる。

数年をかけて開発したということで、ヒョンデの技術者は気に入っている機能だという。筆者も嫌いではなかった。

音質自体は人工的で、改善の余地はあるかもしれない。内燃エンジンが珍しい時代が来れば、時代錯誤に思えるかもしれない。気に入らなければ、オフにもできる。変速を担っていたパドルで、回生ブレーキの強さを調整できるようになる。

車重が約2200kgあることを考えると、動的能力は見事。サスペンションは強化されているものの、旋回時のロールや加減速時のピッチは小さくない。だが、荷重移動でステアリングの重さが変化し、グリップ力を感じ取れる。

ポルシェタイカンを上回る回頭性と調整域

ブレーキペダルの感触も、バイワイヤ制御なことを殆ど感じさせない。サーキットを走ると、ペダルはもう少し重くても良いように思うが、それでは一般道で重すぎると感じるだろう。

ブレーキを引きずりながらの旋回は、適度な落ち着きで爽快。後輪駆動モードを選ばずとも、ポルシェ・タイカンを上回る回頭性と調整域を備える。前後の重量配分は、理想値に近いと予想できる。

ヒョンデ・アイオニック5 N(韓国仕様)
ヒョンデ・アイオニック5 N(韓国仕様)

スタビリティ・コントロールは、完全にオフにできる。コーナーの頂点を過ぎたら、確かなグリップ力を活かし、緩くテールスライドさせながら脱出加速へ持ち込める。高速コーナーでも、僅かにオーバーステア傾向なようだ。

「ドリフトマシンではありませんが、可能です」。とジョンソンは控えめに話す。

思い切りドリフトへ興じたい若者向けに、先出のドリフト・オプティマイザという機能がある。実際に筆者も試せるよう、濡れたスキッドパンが用意されていた。タイヤは、275/35 R21というサイズのピレリ Pゼロだ。

アクセルペダルのストロークが長すぎ、鋭いテールスライドへは持ち込みにくいが、ドリフトをコントロールする練習に丁度いい。雨が降る夜のショッピングモールの駐車場で、アイオニック5 Nが踊る動画が、ネットへポストされる日も遠くないだろう。

エネルギー効率は良くないが、もちろん一般道でも走りへ満足できる。今回は思いのままに運転したから、4.8km/kWhを超えることはなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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