愛車のヘッドライトがない… 部品不足で盗難被害増加、ディーラーも知らずに購入? 欧州
公開 : 2023.11.27 18:25
・英国では自動車部品の供給不足が続く影響で、部品盗難が増えている。
・フロントグリルやヘッドライトなど、前部の部品が狙われやすい。
・ディーラーが「盗難品」と知らずに仕入れてしまうケースも?
部品が足りない… 需要増で犯罪多発
英国では自動車の交換部品不足が続き、自動車犯罪を助長しているのではないかと懸念されている。ディーラーや整備工場、ボディーショップが知らず知らずのうちに盗難品の中古部品をオンラインで購入している可能性があるのだ。
英国の自動車メーカーであるJLR(ジャガー・ランドローバー)は最近、約1万台の車両が交換部品を待っていることを認めた。修理や整備の遅れは数か月に及び、不満を抱くユーザーの中にはクルマを買い替える人もいるため、JLRはディーラーに対し、新品ではなく中古部品を使用することを許可している。
JLRの広報担当者は取材に対し、「(英国内の)一部のディーラーで発生している一時的な部品の遅れを解決し、顧客への影響を最小限に抑えることがJLRの最優先事項です。ディーラーによる現地調達部品の交換や修理は、JLRの仕様に適合するものであれば、例外的な状況において長年行われてきたことです。これは、保証契約の一部として明確に記載されています」と語った。
筆者は、ディーラーから求められる中古部品(廃車から再利用)の需要レベルを調査するため、取引先を装って英国の大手車両リサイクル業者に連絡を取った。すると、営業担当車からこう言われた。「JLRに限らず、ディーラーからの需要は非常に大きい。当社(リサイクル業者)はディーラーネットワークに非常に多くのものを供給しています。エンジンは特に問題で、十分な量を確保するのに必死なんです」
イングランド南西部ドーセットに本社を置く車両リサイクル業者、チャールズ・トレントの顧客サービス責任者であるジョードン・トレント氏は、欧州大陸のディーラーも部品を探していると語った。
「つい昨日も、デンマークのランドローバーディーラーから、交換用のエンジンを必死で探していると連絡がありました」
英国では昨年、2021年比で自動車盗難が24.9%増加したが、犯罪の専門家はその一因として中古部品の需要を挙げている。盗難車の多くは「チョップ・ショップ(解体屋)」で解体され、部品が転売される。
狙われるのはフロント? 警察も動くが…
イングランド中部のウェスト・ミッドランズではこの問題が深刻化しており、同州警察は「ショップ・ア・チョップ・ショップ」と呼ばれる取り締まりキャンペーンを開始。しかし、それに呼応するように、犯罪者は立ち並ぶ車両から部品を盗んでいる。
この種の犯罪は通常、保険金請求を避けたい若いドライバーから部品を求められることから、比較的安価なクルマがターゲットとなることが多い。しかし、車両管理会社AXイノベーションの調査サービス担当ディレクター、ニール・トーマス氏によれば、近年では高価なモデルが狙われやすいという。
「先日、あるユーザーがホテルの駐車場に停めていたレンジローバーからフロントグリルとヘッドライトを盗まれました。当社が回収したBMW M4コンペティションもヘッドライトがなくなっていました」とトーマス氏は言う。
「ほとんどの事故ではフロントエンドが損傷します。現在不足しているグリルやライトの需要から、犯罪者が簡単に転売できることが推測されます」
ネット広告に出ている盗難部品が、知らず知らずのうちにディーラーで購入される可能性もあるため、自動車メーカーはディーラースタッフに部品の出所を確認するよう提言している。
一方、英国自動車リサイクル協会(VRA)は業界標準を高めるため、廃車からの再利用部品に対してVRA基準と呼ばれる認証スキームを開発した。同スキームに参加する企業は、販売する部品を正確に識別・記録・検査する。
オンライン販売のeBayも認定リサイクル品(Certified Recycled)制度を開始した。販売業者の信頼度と中古部品の品質を保証するもので、返金保証にも対応している。