「110km/h巡航が快適」な未来の能力 ベントレー 3 1/2リッター 90年前の富豪の理想(2)

公開 : 2023.12.16 17:46

性能と豪華さ、理想の条件が揃った1930年代のベントレー シンプルで優雅、伸びやかなボディ 美しく芸術品のようなインテリア 英国編集部が5種をご紹介

発見時はバラバラ状態だったオールウェザー

1946年、豪華なボディの重さへ対応するため、ベントレーは3 1/2リッターの直列6気筒エンジンを4257ccへ拡大。最高出力は10ps上昇し、モデル名も4 1/4リッターへ改められた。

ダーク・グリーンとオリーブ・グリーンのツートーンに塗られた、1937年式4ドアサルーンのボディは、コックシュート社製。初代オーナーは、ロビンソンズ・ブルワリー社の社長、F.E.ロビンソン氏だった。

ベントレー 4 1/4リッター・ヴァンデンプラ・オールウェザー(1936〜1938年/英国仕様)
ベントレー 4 1/4リッター・ヴァンデンプラ・オールウェザー(1936〜1938年/英国仕様)

平日は運転手へ乗せられ会社へ向かい、週末は自ら運転を楽しんだという。彼は16年所有し、走行距離を16万km以上へ伸ばし、手放している。

その63年後に、孫のウィリアム・ロビンソン氏が発見。状態は悪くなく、実際に走らせながら都度レストアを施している。ボディの塗装はオリジナルで、グリーンのインテリアとウッドパネルも美しい。スライディングルーフを開くと、開放感が増す。

ラジエターグリルの前方には、フォグランプとツイン・ホーンが並ぶ。滑らかにカーブを描くテールに、スペアタイヤを背負う。

他方、ブラックの4ドア・オープンボディはヴァンデンプラ社製。上下するサイドウインドウを備え、「オールウェザー」という名で19台が製造された。

ヴォーン・ウィーラー氏がオーナーの1台には、チョコレート・ブラウンのレザー内装が組み合わされ、とてもエレガント。ところが彼が発見した時は、バラバラの状態だったという。

ワイヤーホイールがスポーティ。スペアタイヤは、右のフロントフェンダーに載る。細身のテールには、上下に分割して開くトランクリッドが備わる。

美しく芸術品のようなインテリア

この4台は、いずれも状態が素晴らしく、ドライビング体験は共通する部分が多い。6気筒エンジンはシルキーに回転し、タイヤは路面へ追従する。大切な部品の1つが不完全なだけで、全体の印象は霞んでしまうだろう。

運転席へ座る場合は、シートの右側にシフトレバーとハンドブレーキ・ハンドルが突き出ているため、左側から乗って身体を滑らせるのがベスト。フロントシート側の空間は、見た目以上に狭い。

ダッシュボードやドアパネルなどのデザインはそれぞれ異なるが、芸術品のようだという点で共通している。小さな装飾1つとっても、しっかり美しい。

固定ルーフが載るボディでは、身長の高い大人でも窮屈ではない頭上空間が残る。荷室内には、見事なツールキットが用意されている。

スピードメーターとタコメーターは、ステアリングコラムの右側。左側には、補機メーターと、カシっと動くスイッチ類がずらりと並ぶ。

ステアリングホイールは黒く巨大。前期では4スポーク、後期では3スポークで、中央のホーンボタンを囲むようにハンドスロットルとチョーク、点火タイミングのレバーが並ぶ。ダンパーの硬さも、ソフトとハードの2段階から選べる。

エンジンが冷えた状態では、点火タイミングを遅らせ、チョークを少し効かせてから、ダッシュボードの大きなスターターボタンを押す。6本のシリンダーはすぐに目覚め、静かにアイドリングし始める。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・テイラー

    Simon Taylor

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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