楽しむのにパワーは必要か? 100馬力以下の名機 5選 速さにこだわらない「本質」とは

公開 : 2023.12.03 18:05

・パワーと楽しさは必ずしもイコールではない。
・最高出力100ps以下で最高に楽しいクルマ、バイク、飛行機を紹介する。
・運転する楽しさ、走る楽しさの「本質」を考えてみた。

楽しさを追求した乗り物とは

どれだけのパワーが必要なのか? 別の言い方をすれば、どれだけ小さいパワーで満足できるのか?

今回ご紹介するのは、最高出力100ps以下の5台のヒーローで、スピードにこだわらず、楽しさを追求したものたちだ。

運転する楽しさ、走る楽しさの「本質」を英国人記者が考えてみた。
運転する楽しさ、走る楽しさの「本質」を英国人記者が考えてみた。    AUTOCAR

少し前、わたしは新型メルセデスAMG A 35に乗った。とても有能で、非常によくできていて、インテリアの質感も高く、とても速い。その2.0Lターボエンジンは310psを発生し、四輪駆動で0-100km加速5秒以下というパフォーマンスを誇る。

メルセデスはこれに続いて、最高出力421psの新型A 45を出した。A 35より25%パワーアップしているが、楽しさも25%アップしているのだろうか? もちろん、そんなことはない。A 35の運転が楽しいというわけではなく、極めて頼もしく速いだけだ。

馬力競争は収拾がつかない。ハッチバックは150psしかなくても十分だし、600ps以下のスーパーカーは然るべきスーパーカーとは言えない。そうではないだろうか? すべてはマーケティング主導だ。エンジニアたちは、馬力を増やすことはほとんどの場合、重量を増やすということだと理解している。

パワーと楽しさは必ずしも一致しない

例えば、シトロエン2CV(旧型ミニ・クーパーSでもいい)を所有したことのある人ならわかると思うが、楽しむためにパワーは必要ない。実際、100ps以下でも面白いクルマはたくさんある。

100psという丸い数字がいい。この数字を頭の中でグルグル回しているうちに、パワーはそれほどでもないが、ものすごく楽しいマシンについて考えるようになった。自動車だけでなく、オートバイやその他の乗り物もそうだ。例えば飛行機。パイパー・カブは、わずか65psととてもベーシックなマシンだが、飛ぶのが楽しい。

シトロエン2CVは非力だがとても楽しい。
シトロエン2CVは非力だがとても楽しい。

そのことを証明するために、AUTOCARは今回100psを超えない素晴らしいマシンを集めた。古いものもあれば新しいものもあり、「ラッダイト」という筆者個人の評判を覆すために電動車も用意した。それから、カシュート・スペシャルというエアレーサーも持ってきたので、お楽しみに。

スマートロードスター

わたしの妹はカーデザイナーのゴードン・マレー氏を知らないが、彼との共通点が1つある。2人ともスマート・ロードスターを所有しているということだ。そして2人とも、その欠点を認めながらも愛している。

スマート・ロードスターは、ほとんど完璧なミニチュア・スポーツカーであり、おそらく21世紀においてオースティン・ヒーレーの「フロッグアイ」スプライトに限りなく近い。ゴードン・マレー氏は、スプライトのオーナーでもある。

スマート・ロードスター・クーペ/コンバーチブル
スマート・ロードスター・クーペ/コンバーチブル    AUTOCAR

わずか82psの3気筒ターボエンジンを搭載するこのモデルには、ノッチバックのシンプルなロードスターと、マレー氏(と我が妹)のようなロードスター・クーペの2つのバージョンが存在する。後者は815kgと重めだが、それでも1トン当たりのパワーウェイトレシオは99psだ。

このクルマが楽しいのは、そのサイズにある。フェラーリはおろか、現行のポルシェ911でも維持できないようなスピードで田舎道を走ることができるだけでなく、実際のスピードよりもはるかに速いという印象を与える。そしてそれは、現代におけるとんでもないメリットになる。

雨漏りの可能性を除けば、ロードスターのアキレス腱は6速シーケンシャル・トランスミッションだ。ギクシャクして洗練性を欠くが、慣れればそれに合わせて運転でき、楽しさがイライラを上回る。

スマート・ロードスターは2003年から2006年までの3年間という短い生涯を閉じた。スマートが儲かることはなかったし、保証請求には多額の費用がかかった。もっと長生きして、欠点を直してもらいたかったクルマがあるとすれば、それはスマート・ロードスターだ。

古くなればなるほどその価値が増すような小さな宝石のようなクルマであり、欠点を無視したり、回避したりするのが簡単なクルマでもある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    コリン・グッドウィン

    Colin Goodwin

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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