楽しむのにパワーは必要か? 100馬力以下の名機 5選 速さにこだわらない「本質」とは

公開 : 2023.12.03 18:05

ロータス6

2CVのような非力なクルマを運転すると、スムーズさとパワー・マネージメントが身につくので、より速く、より優れたドライバーになれるというのは知る人ぞ知る定説だ。その哲学を、こちらのロータス6に当てはめて考えてみよう。

1954年、ロータスのごく初期に製造されたこの6は、シンプルな乗り物の本質である。パワーユニットはいくつかあるが、今回用意した車両は最も一般的なフォード・プリフェクトE93aの1172ccサイドバルブを搭載。このエンジンは、アクアプレーン社による社外品シリンダーヘッドとツインキャブレターを備えており、おそらく40psを発生すると思われる。

ロータス6
ロータス6    AUTOCAR

ロータス6を運転するには、ABSやTCSといった運転支援システムに慣れた現代人にとっては、かなり集中力が要求される。3.5インチの細いリムの内側にあるドラムブレーキは油圧式ではなく、ケーブルで操作される。

トランスミッションはフォード製の3速で、1速にシンクロメッシュはない。長年にわたり、多くの人が純正のウォームローラー式ステアリングをより現代的なラックに交換してきた。今回の車両は純正状態で、かなり気難しいが、そもそもこのクルマの運転には熟考が必要であり、純粋な体験ができるのだから、そんなことは大した問題ではない。

このしなやかで小さなロータスは、狭い道ではジャガーXK120のドライバーを慌てさせたかもしれない。XK120はパワーこそあれど、ブレーキが弱く、路面追従性もわずかだ。

何はともあれ、1960年代のレーシングドライバーの多くは、このようなロータスのステアリングを握って見習い期間を過ごし、さまざまな教訓を学んだ。我々にとっても再訪する喜びがある。

トライアンフ・スラクストンR

オートバイは、わたしが個人的に最も長く愛してきた乗り物だ。数年前、同僚のスティーブ・クロプリー(編集長)とわたしは、バイクを持たずに派手なスポーツカーを所有するよりは、ごく控えめなクルマとバイクを所有する方がいいということで意見が一致した。今日、わたしはその確信を強めている。

100ps以下のバイクを見つけるのは簡単だし、速くて楽しいバイクを見つけるのも簡単だ。今回選んだのは、このトライアンフ・スラクストンRだ。1200cc並列2気筒水冷エンジンを搭載し、最高出力97psを発生。6速トランスミッション、乾燥重量206kg。

トライアンフ・スラクストンR
トライアンフ・スラクストンR    AUTOCAR

標準モデルのスラクストンも同じエンジンを搭載するが、Rモデルに装備されるセクシーなオーリンズ製リアサスペンションやショーワ製倒立フロントフォーク、ブレンボ製モノブロックキャリパーはない。

トライアンフはスラクストンRの最高速度を公表していないが、推定215km/h前後、つまり腕が痛くなり、サドルから吹き飛ばされそうになるポイントを70km/hほど超えたあたりだろう。ライディングモードには「レイン」、「ロード」、「スポーツ」があるが、エンジンのパワーデリバリーはとてもスムーズなので、濡れた路面でスロットルレスポンスの速いスポーツでも問題ない。

古いバイクは好きではない。率直に言えば、ハンドリングが悪かったり、ちゃんと止まらなかったり、タイヤがグリップしなかったり、信頼性が低かったりするのがほとんどだ。わたしはノートン、トライアンフ、ラベルダと乗り継いできたが、そのどれにも戻りたくない。このスラクストンRに乗って、さらに確信した。ハンドリングは素晴らしく、ブレーキは驚異的で、必要なだけのパワーがある。

とはいえ、わたしが最も欲しているのはドゥカティのパニガーレV4(写真)だ。200ps以上だからというわけではなく、ボルトの一本まで精巧に作り込まれたゴージャスなデザインが魅力的だから。そして、そのエンジン音がとんでもないからだ。もし馬力が半分でも、わたしは同じように感じるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    コリン・グッドウィン

    Colin Goodwin

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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